「中露朝」のシナリオに乗った韓国のGSOMIA破棄
これで第一段階の中露の作戦は成功している。
米韓合同軍事演習に激怒した金正恩委員長
四面楚歌となりつつあった韓国の文在寅政権は、「それでもアメリカにだけは見放されまい」として、この期に及んで(8月5日)米韓合同軍事演習に踏み切った。武力を伴わないシミュレーションであるとはいえ、北朝鮮の金正恩委員長は激怒。トランプ大統領にではなく、文在寅に対して「二度と同じテーブルに就くことはない」と言い放ち、怒りを全開にした。
うろたえたのは文在寅だろう。
何せ彼にとっての唯一の自慢は南北融和のために金正恩と会い、トランプとの仲介をしたことだと、きっと思っているだろうから。また、日本に対抗して「北朝鮮と一体となって経済発展をさせるから、今に韓国の経済は日本を追い抜く」と豪語していた文在寅は、その意味においても立場を無くしてしまった。
日韓のGSOMIA(ジーソミア。軍事情報包括保護協定)は主として北朝鮮(や中国)の軍事動向をいち早くキャッチして情報を日韓の間で共有するのが目的だ。北朝鮮は早くからGSOMIAに抗議し、韓国に破棄を迫っていた。
破棄を迫っているのは中国も同じである。
「お前はどっちの味方なのだ」と北からも中国からも言われて、文在寅はいよいよ四面楚歌なのであった。
決定打は日中韓外相会談――ポストINF中距離弾道ミサイル
決定打は8月20日に北京で行われた日中韓の外相会談だった。
アメリカはロシアとのINFから脱退し、その補強としてアメリカの中距離弾道ミサイルを、韓国をはじめとした東アジア諸国に配備しようとしているが、中韓両外相の会談において、中国側は韓国に強く反対の意思を伝えたという。韓国側は韓国に配備する可能性を再度否定したので、中韓の距離が縮まった。その上でのGSOMIAの破棄なのである。
1987年に当時のソ連とアメリカとの間で結ばれたINFには、中国は入っていない。それを良いことに中国は東風-21(DF-21)(射程距離2150~3000キロ)や東風-26(DF-26)(射程距離4000キロ)などの中距離弾道ミサイルの開発に余念がなかった。
中国の中央テレビ局CCTVも中国の軍事力がどれほど高まっているかを誇らしく報道しまくってきた。したがってアメリカとしてはINFから離脱して、さらなる高性能な中距離弾道ミサイルを製造してそれを韓国などに配備し、中国を抑え込んで、新しい東北アジアのパワーバランスを形成しようとしている。
もし韓国がアメリカの指示に従ってポストINF中距離弾道ミサイルなどを配備しようものなら、中国の韓国への怒りはTHAAD(サード。終末高高度防衛ミサイル)を韓国に配備した時のような経済報復では済まず、中韓国交断絶にまで行くだろうと、中国政府の元高官は筆者に教えてくれた。