最新記事

レイプ事件

巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ

Cruise Ship Passenger Gets Gang Raped, Royal Caribbean 'Aware' Of Sexual Assault Epidemic

2019年7月30日(火)16時15分
カルヤン・クマル

集団レイプ事件が起きたクルーズ船「オアシス・オブ・ザ・シーズ」 Marina113/iStock.p

<複数男性に泥酔させられレイプされた15歳の少女を保護しなかったとしてクルーズ最大手「ロイヤル・カリビアン」が注意義務違反とされたが、船内での性的暴行は珍しいことではない>

フロリダ州マイアミを拠点とするクルーズ最大手の「ロイヤル・カリビアン」は、2015年に同社のクルーズ船で発生した少女に対する集団レイプ事件をめぐる控訴審で、逆転敗訴した。

フロリダの第11巡回区連邦控訴裁判所は7月24日、ロイヤル・カリビアン側に落ち度はなかったとする一審判決を覆す判決を下したのだ。

控訴裁判所は、船内で起きた性的暴行を知らなかったと白を切り通したロイヤル・カリビアンを非難。10代の被害者を適切に保護しなかったのは注意義務違反だと断じた。

ロイヤル・カリビアンのクルーズ船内では、このケース以外にも性的暴行が横行していた。それを知りながら、女性客への注意喚起など安全確保の措置を何も講じていなかったのだ。

<参考記事>放尿にレイプ!? エスカレートするフライト中の暴行事件

未成年の被害女性が「アルコールを大量に飲まされ、暴行を受ける」ことになったのは、ロイヤル・カリビアンのそうした怠慢のせいだ、とした。

乗組員は見て見ぬふり

控訴裁判所は、訴訟の回復を指示したあと、文書で次のように述べている。

「原告の申し立てには十分な根拠がある。(被害女性)K.T.が動けなくなるほど大量のアルコールを男たちに飲まされ、客室へ連れて行かれるのを、ロイヤル・カリビアンの乗員は助けようともせず放置した」

<参考記事>介護施設で寝たきりの女性を妊娠させた看護師の男を逮捕

被害女性K.T.は、15歳だった2015年12月26日に、クルーズ船「オアシス・オブ・ザ・シーズ」に乗船。姉妹2人ならびに祖父母とともに7日間のクルーズに出発した。

K.T.によれば、彼女が船内のバーに座っていると、男性に取り囲まれてアルコールを勧められた。「ひどく酔い、明らかに泥酔し、混乱して足元がふらついた」。そして、「動けなくなった」という。

その後、男たちは彼女を客室へと連れ込み、そこで「容赦なく襲いかかり、集団で性的暴行を加えた」。

K.T.は2016年、ロイヤル・カリビアンを訴えた。

一審のK・マイケル・ムーア裁判官は2017年8月、K.T.の訴えを退けた。そして、乗務員たちは彼女がアルコールを飲まされている様子を目撃したものの、それが性的暴行へとつながることは「予見できなかった」とするロイヤル・カリビアン側の主張を受け入れた。

K.T.は、一審判決を受けて控訴した。

訴状の中でK.T.は、自分が男性に取り囲まれ飲酒を強要されている場面を、複数の乗務員が見ていたと主張。「未成年がアルコールを飲まされていた」ことを、認識していたはずだと述べた。

あまり表に出ないが、クルーズ船でのレイプ被害は珍しいことではない。2016年~2019年4月までの間にアメリカ運輸省に報告されたデータによると、クルーズ船内で発生した性的暴行事件は220件に上っている。

(翻訳:ガリレオ)

20190806issue_cover200.jpg
※8月6日号(7月30日発売)は、「ハードブレグジット:衝撃に備えよ」特集。ボリス・ジョンソンとは何者か。奇行と暴言と変な髪型で有名なこの英新首相は、どれだけ危険なのか。合意なきEU離脱の不確実性とリスク。日本企業には好機になるかもしれない。


ニューズウィーク日本版 トランプ関税大戦争
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月15日号(4月8日発売)は「トランプ関税大戦争」特集。同盟国も敵対国もお構いなし。トランプ版「ガイアツ」は世界恐慌を招くのか?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドルは上昇へ、債券市場の小さな問題は解決=トランプ

ビジネス

トランプ氏、スマホ・PCなど電子機器の関税を免除 

ワールド

アングル:中国にも「働き方改革」の兆し、長時間労働

ワールド

グリーンランドに「フリーダムシティ」構想、米ハイテ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税大戦争
特集:トランプ関税大戦争
2025年4月15日号(4/ 8発売)

同盟国も敵対国もお構いなし。トランプ版「ガイアツ」は世界恐慌を招くのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    凍える夜、ひとりで女性の家に現れた犬...見えた「助けを求める目」とその結末
  • 2
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 3
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 4
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 5
    車にひかれ怯えていた保護犬が、ついに心を開いた瞬…
  • 6
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 7
    米ステルス戦闘機とロシア軍用機2機が「超近接飛行」…
  • 8
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク…
  • 9
    シャーロット王女と「親友」の絶妙な距離感が話題に.…
  • 10
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 1
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    凍える夜、ひとりで女性の家に現れた犬...見えた「助…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 9
    「やっぱり忘れてなかった」6カ月ぶりの再会に、犬が…
  • 10
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 3
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中