アメリカ疾病予防管理センター、プールでの寄生虫病の感染に注意を呼びかけ
プールや水遊び場などが要注意 donkeyru -iStock
<アメリカ疾病予防管理センターは、クリプトスポリジウム属原虫がヒトなどの哺乳類の消化管に寄生し、水様性下痢や腹痛、発熱などを引き起こす感染症に、プールや水遊び場を通じて感染することへの注意を呼びかけた>
夏がいよいよ到来し、老若男女問わず、多くの人々がプールや湖、川などでウォーターレジャーを楽しむ季節となってきた。本格的な夏の到来に先立ち、米国では、2019年6月28日、疾病予防管理センター(CDC)が水系感染症のひとつ「クリプトスポリジウム症」の発生動向に関する調査結果を発表し、クリプトスポリジウム症に感染しないよう、注意を呼びかけている。
水や食物を通じて経口感染することが多い
クリプトスポリジウム症とは、クリプトスポリジウム属原虫がヒトなどの哺乳類の消化管に寄生し、水様性下痢や腹痛、発熱などを引き起こす感染症である。
糞便の中に排出され、これに感染した水や食物を通じて経口感染することが多く、2日から10日の潜伏期を経て発症する。免疫系が正常であれば2週間程度で自然治癒するが、免疫不全状態では重症化し、死に至るケースもある。また、治癒後も2週間から1ヶ月程度は寄生原虫が糞便内に排出されることがあるため、プールなどでの二次感染にも注意が必要だ。
疾病予防管理センターでは、米国50州、コロンビア特別区、海外領土の公衆衛生当局者が「全米アウトブレイク報告システム(NORS)」を通じて2009年から2017年までに任意で報告したデータを集計した。
その結果、クリプトスポリジウム症の集団発生件数は合わせて444件にのぼり、患者7465名のうち、287名が入院加療し、1名が死亡した。クリプトスポリジウム症の集団発生の報告件数は2009年から2017年までに年平均12.8%増加している。
プールや水遊び場などが要注意
クリプトスポリジウム症の集団発生で最も多いのは、プールや水遊び場などのレクリエーション用水によるもので、全体の35.1%にあたる156件が報告され、そのうち100件はプールで発生したものだった。また、月別にみると、クリプトスポリジウム症の集団発生件数は、7月から8月にピークに達している。
疾病予防管理センターでは、クリプトスポリジウム症への感染予防策として、プールや水遊び場などのレクリエーション用水を飲まないように呼びかけるとともに、クリプトスポリジウム症に感染した場合、治癒後2週間はプールや水遊び場の利用を控えるよう求めている。
また、この調査結果によると、クリプトスポリジウム症の集団発生は、家畜との接触や、保育所でのオムツ替え、食中毒などでも起こっている。トイレ使用後やオムツ替えの後、食事前などでの手洗いを徹底し、野菜や果物を生で食べる際には清潔な水で洗うなど、日常生活においても衛生を心がけることが重要だ。