身体中が発光する14センチの新種のサメが見つかる
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体長14.2センチの新種のサメ (Grace et al., 2019, Zootaxa)
<メキシコ湾で深海探査艇が捕獲していた体長14.2センチのサメが新種として論文発表された>
小型のサメの一種ヨロイザメ科フクロザメ属に分類される体長14.2センチの新種の雄ザメが見つかり、「アメリカンフクロザメ」と名付けられた。2019年7月18日、動物分類学の学術誌「ズータクサ」において、その研究論文が発表されている。
胸びれの上部に袋状器官を持つフクロザメ
このサメは、メキシコ湾でマッコウクジラの調査にあたっていたアメリカ海洋大気庁(NOAA)の深海探査艇パイシーズが2010年2月に捕獲したものだ。小型で、頭部が丸みを帯び、胸びれの上部に袋状器官を持つフクロザメは非常に珍しい。1979年に体長40センチの雌ザメが東太平洋で初めて捕獲されたのに続き、このサメが2例目となる。
アメリカ海洋大気庁のマーク・グレース研究員は、2013年、一連の調査で採集した生物のなかからこのサメを見つけ、米テューレーン大学の魚類標本にこれを加えるよう依頼。また、同大学の博士課程に在籍するマイケル・ドゥーシー研究員とともに、この研究に着手した。
体中が無数の発光器で覆われている
研究チームでは、解剖顕微鏡を使って外部形態を観察し、X線撮影や高解像度CTスキャンに加え、仏グルノーブルにある欧州シンクロトロン放射光研究所(ESRF)で、通常のX線よりも1000億倍高い輝度を持つシンクトロン放射光を使って内部形態を撮影。これらのデータを用い、このサメについて詳しく分析した。
その結果、1979年に見つかったフクロザメに比べて椎骨が10本少なく、体中が無数の発光器で覆われているなど、異なる特徴が認められた。なお、両側の胸びれの上部に発光液を生成する小さな袋状器官がある点は共通しており、サメは、この発光液を使って、獲物をおびき寄せたり、天敵から逃れたりしているとみられる。
研究論文の共同著者でもあるテューレーン大学のヘンリー・バート教授は、今回の研究成果について「メキシコ湾の深海についてこれまでに解明されていることはほんのわずかであり、この海域には、まだ未知の生物が数多く潜んでいることを示すものだ」と述べている。