インドネシア「大統領選無効」憲法裁審理続く 野党連合崩壊で政界再編
憲法裁判所前では大統領支持派、プラボウォ支持派がともに「正しい結果」を求めていた Willy Kurniawan - REUTERS
<インドネシアの大統領選は、落選した野党候補が「不正投票があった」と主張、憲法裁判所で審理が始まった。一方、野党連合からは離反も出て政界は風雲急を告げる様相だ>
4月17日に投票され、5月21日に選挙管理委員会が最終的な集計結果を発表したインドネシア大統領選。結果に対し「不正があった」と敗者の大統領候補プラボウィ・スビアント氏陣営が異議申し立てをしたことを受けて、憲法裁判所は本格的な審理を6月14日から始めている。
その一方でプラボウォ氏を大統領選で支持した野党連合の一部がジョコ・ウィドド大統領や与党連合に接近する動きが進んでおり、インドネシアに政界再編の波が押し寄せている。
憲法裁での審理の様子は複数の民放テレビ局が生中継するなど国民の関心は高い。しかし、ジョコ・ウィドド大統領陣営の弁護団も参加して進むプラボウォ陣営弁護団と裁判官のやりとりから、プラボウォ側の「ジョコ・ウィドド大統領陣営の失格を認定して選挙結果を撤回、プラボウォ氏の当選を認める」「不正のあった12州での再選挙」などの主張は退けられる公算が高まっている。
前回2014年の大統領選でも負けたプラボウォ陣営は同様の訴えを憲法裁に起こしたが、証拠不十分で却下されている。
大統領側が「2200万票水増し」と訴え
プラボウォ側はこれまでの審理で、大統領選では「組織的、大規模な不正」があったとしてジョコ・ウィドド大統領陣営が2200万票を水増しして集計、不正があったと主張している。
選管の正式集計では、ジョコ・ウィドド大統領が8560万7362票を獲得(得票率55.5%)、プラボウォ氏の6865万239票(同44.5%)となっている。その票差は1695万7123票となっている。
さらにプラボウォ側は投票の公正性にも疑問を示しており、6月19日の審理では東ジャワ州の選管関係者がプラボウォ陣営の証人として出廷した。
「今年4月ごろに脅迫を受けた」とする証人に裁判官が「誰から脅迫を受けたのか」と証言を求めるものの証人が「私や家族の危険が及ぶのでそれは言えない」と拒否。裁判官が「ではなぜ脅迫を受けたことをその時に司法当局なりに通報しなかったのか、インドネシアは司法国家である」と迫るなど、「法廷ドラマ」としても面白い展開が続いている。