韓国は米中の板挟みに ファーウェイ排除で韓国経済は大打撃
5月30日、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)に対して米国が事実上の禁輸措置を講じた数日後、中国深セン近郊にある同社本社を、韓国の政治家や経済人など100人以上の一行が訪問した。写真はファーウェイのロゴ。中国深センの同社本部で29日撮影(2019年 ロイター/Jason Lee)
中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)に対して米国が事実上の禁輸措置を講じた数日後、中国深セン近郊にある同社本社を、韓国の政治家や経済人など100人以上の一行が訪問した。
サムスン電子などの企業幹部が、ファーウェイの次世代高速通信規格「5G」機器を使った高速ロボティクスのデモやスマートシティのシミュレーションを見学した。アジア4位の経済を誇る韓国と中国のテクノロジー連携の強化を目的としたイベントの一環で、韓国政府も支援していた。
だが、開催直前となる5月中旬に、米政府が自国IT・通信企業に対してファーウェイとの取引禁止を決め、世界中の企業にも後に続くよう促したことが、イベントに影を落としていた。
米国による「ファーウェイ封じ込め」とその背景にある米中貿易戦争は、輸出依存国の韓国を、再び苦境に追い込んでいる。最重要の同盟国と、最大の貿易相手国との板挟みに陥ったのだ。
世界的な主要テクノロジー企業が次々とファーウェイに対する部品やソフトウエアの提供を取りやめ、複数の通信事業者がファーウェイ製スマートフォンの新製品発売を先送りした。
だが韓国の業界幹部や政治家は、中国とこれまで通りのビジネスを続ける以外に選択肢はないと話す。
韓国テクノロジー最大手のサムスンにとって、米政府によるファーウェイ締め付けで受ける恩恵よりも、ビジネス喪失による打撃の方が大きい、と専門家は指摘する。
サムスンは、ファーウェイからスマホと通信機器のシェアを奪える可能性があり、サムスン株は米政府の発表以来わずかに上昇している。また、米中貿易戦争が、半導体やスマホ画面分野での新興中国メーカーの台頭を妨げるかもしれない。
だがファーウェイは、サムスン製半導体メモリーの最大顧客に含まれる。また、韓国企業は中国に複数の生産拠点を構え、そこから多数の顧客に製品を届けている。ファーウェイの本社訪問には、サムスンの尹富根(ユン・ブグン)副会長も参加した。
「両社は競争関係にあるが、重要なパートナーでもある」。今回の訪問団の1人だった与党・韓国民主党のミン・ビョンド議員はこう話す。韓国企業には、ファーウェイとの取引継続に代わる「単純な選択肢はない」とロイターに語った。サムスンは、コメントしなかった。