キャッシュレス化が進むインドネシア 配車サービスGOJEKが社会を変える
潜在的ビジネスチャンスにあふれた巨大マーケット
インドネシア人の約半数は銀行口座を持っていない。それは銀行を信用していないことと手続きが煩雑なことが原因といわれている。さらにクレジットカードの所有率は人口のわずか2%に過ぎない。
その一方で携帯電話の普及台数は約3億4000万台で普及率は人口比約130%。このうちスマートフォンが約60%を占めているという。仕事用とプライベート用に2台所有する人も多く、スマホのアプリを使う生活シーン、ビジネスシーンは急速に広がっている。
プリペイドカードの普及も著しい。ジャカルタ市内の深刻な交通渋滞解消を目指して始まった「トランス・ジャカルタ」のバス専用レーン、首都圏通勤電車の「KRL」、そして2019年4月1日から営業運転を開始した日本の技術協力による同国初の地下鉄「MRT」。こうしたバス、通勤電車、地下鉄のいずれもが共通のプリペイドカードで利用できる。
さらに高速道路も料金所では原則現金を受け付けず「高速カード」による支払いが前提となるなど「キャッシュレス化」「プリペイド化」が目覚ましく進んでいる。
携帯電話の料金も大半がプリペイド方式でコンビニや携帯電話会社で支払うことが多い。ここまでくると、銀行口座やクレジットカードをもつ必要性が薄れていることも事実である。こうした背景もインドネシアでのフィンテックの目覚ましい普及の一因と分析されている。
こうしたなか、GOJEKは2018年からジャカルタにも出店しているイオンモールと協業、イオンモールの商品をGOJEKのアプリ経由で注文し、GOJEKの運転手がデリバリーするというサービスを開始している。また、三菱商事が数十億円といわれる規模の出資をするなど日本企業、商社との連携、提携を深めている。
東南アジア地域で約800万人のユーザーを抱え、その40%がインドネシアというGOJEK、2018年1月のジャカルタ首都圏での1号店オープン以来これまでに1000店以上を展開するという急成長中の「ワルン・ピンタール」と、いずれも短期間でインドネシアのフィンテック分野に変革をもたらしつつある。
なんといってもその最大の魅力は人口約2億5000万人という巨大な市場の存在であり、今後も経済発展が見込まれるだけに、日本企業も熱い視線を注いでいる。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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