高齢ドライバー急増で灯る日本全国の危険信号
高齢ドライバーによる運転事故が全国で相次いでいる maroke/iStock.
<21世紀に入ってからの約20年で、75歳以上の運転免許の保有者数は3.4倍に急増>
高齢ドライバーによる運転事故が全国で相次いでいる。先月19日には、東京池袋で87歳の男性が運転する車が暴走し、横断歩道を渡っていた母子をはねて死亡させる事故が起きた。
高齢になると運動能力や判断能力が低下して事故を起こしやすくなるが、高齢化の進行に伴い、高齢ドライバーの絶対数は増えている。警察庁の『運転免許統計』によると、75歳以上の運転免許保有者は2001年では154万人だったが、2018年では528万人になっている。約20年で3.4倍に増えた。
これは実数だが、2018年の75歳以上人口(1798万人)に占める割合にすると29.4%となる。現在では、後期高齢者の3人に1人が何らかの運転免許を保有している。免許を持っているだけで運転しない人もいるが、高齢ドライバーの数の指標にはなる。この数値を都道府県別に計算し、高い順に並べると<表1>のようになる。
長野県と群馬県では4割を超えている。これらの県では100メートルほどの移動にも車を使うと言うが、ここまで生活に染みついていると、高齢になっても免許を手放すのはためらわれるのだろう。
一方、都市部では保有率が低くなっている。東京都では16.2%でしかない。交通網が発達しているので自家用車の必要性は低く、土地が高いので維持費もかさむためだ。高齢者の免許保有率は、おおよそ都市化の度合いと逆相関の関係にある。
地方では80歳、90歳を過ぎてもハンドルを握る高齢者が多いが、「小さい子をひきはしないか」と家族は気が気でなく、幼児の親は「この子が高齢者の暴走車にひかれはしないか」と気をもんでいる。幼児の場合、危険回避もままならない。
2018年の5歳未満人口は484万人で、高齢ドライバーは先ほどみたように528万人だ。前者に対する後者の百分比は109.1となる。都道府県別に出すと、トップは秋田県の203.6、その次は長野県の193.8となる。これらの県では高齢ドライバーが幼児人口の2倍ほどいる。悲惨な事故が起きないよう対策を講じる必要性が高い。