イラン戦争に突き進むアメリカ
Trump’s Iran Policy Is Becoming Dangerous
これに対抗してイランは、自国沖合のホルムズ海峡(世界の原油輸送の約20%を占める重要ルート)を封鎖すると警告した。さらにイラン政府筋によると、自国の宿敵であり、トランプ政権のイラン制裁を後押ししているサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)の原油輸出を妨害するため、バブ・エル・マンデブ海峡と紅海を航行する石油タンカーを攻撃するか、この2国の重要なインフラをサイバー攻撃で破壊する可能性もあるという。
トランプ政権は締め付けを一層強化するため、イランの精鋭部隊である革命防衛隊をテロ組織に指定した。アメリカが他国の軍隊をテロ組織に指定するのはこれが初めてだ。これに対抗して、イランの国防・外交を統括する最高安全保障委員会は、中東などを管轄する米中央軍を「テロ組織」、アメリカを「テロ支援国家」に指定した。
イラン限界で核開発再開か
一方で、イラン指導部は核開発の再開も検討しはじめているようだ。これまでイランは核合意で約束された経済的な恩恵をほとんど受けていないにもかかわらず、履行義務を守り、ウラン濃縮などの活動を自粛してきた。この1年程イランは、アメリカの制裁の理不尽さを国際社会に訴えつつ、2020年の米大統領選でトランプ政権が退陣するまで、何とかしのごうとしているようだった。
だが5月8日、イランのハサン・ロウハニ大統領は核合意の履行の一部を即時停止すると宣言し、初めて核合意に逆行する決定を下した。アメリカの反応は激しかった。トランプは即日、金属の輸出を禁止する追加制裁をイランに科す大統領令に署名した。
今や、核開発再開を自粛すべきだというイランのエリート層の政治的合意は崩れつつある。中部のフォルドウにある地下核施設で、核合意の制限を越えて低濃縮ウランの備蓄を増やすか、高濃縮ウランの製造を再開する可能性があると、イラン高官は示唆した。核合意の一部停止だけでなく、政権内には核合意からの完全離脱を主張する声さえあるとジャバド・ザリフ外相は述べた。今すぐこうした極端な措置を取る可能性は低いものの、イランの我慢が限界に達しつつあるのは間違いない。
2018年5月8日にトランプが核合意離脱を表明してから1年、今や制裁と報復の連鎖がエスカレートし、緊張はピークに達している。軍事対決のリスクは日々高まる一方だ。