最新記事

イラン

イラン戦争に突き進むアメリカ

Trump’s Iran Policy Is Becoming Dangerous

2019年5月9日(木)17時00分
コリン・カール

米軍とイランの支援を受けた武装勢力はイラクとシリアで、また多くの船舶が航行するペルシャ湾で、隣り合わせで活動している。「世界最悪の人道危機」の舞台とされるイエメンでは、サウジアラビアとUAEがイランがテコ入れするイエメンの武装勢力ホーシー派への空爆を続行。イスラエルは、シリアにおけるイランの拠点と武器輸送に対する軍事攻撃を繰り返している。こうした極めてキナ臭い状況では、意図的に、あるいは意図せずして、アメリカとイランの間で戦争が勃発する可能性はいくらもある。

もしもイランやその代理勢力がアメリカの圧力に対して、アメリカを怒らせるような、あるいは地域の重要な石油インフラに大打撃を与えるような方法で対応すれば、事態は急速に手に負えない状態に悪化しかねない。

バラク・オバマ前政権の後半には、両国政府の間に危機管理のための高級事務レベルの対話ルートがあったが、今はそれがない。そして双方の強硬派は争いを望んでおり、緊張を緩和させるよりもむしろ増大させるチャンスを伺っているように見える。

開戦を正当化する理屈を検討

ほかの全ての条件が同じなら、トランプはおそらく中東でアメリカが新たな戦争に携わることを望まないだろう。だが過去が「序章」であるならば、イランが火に油を注ぐような好戦的な挑発をしてくれば、トランプは本能的にそれに(おそらくツイッターで)反応すると予想される。またイランの行動を受けて、右派の献金者や議会タカ派、地域の同盟相手――トランプにイラン核合意からの離脱を強く求めた勢力――がトランプに対して「武力行使すべき」と強烈な圧力をかけることも容易に想像できる。

それにトランプの周囲にはもう、H.R.マクマスター前国家安全保障担当大統領補佐官やジェームズ・マティス前国防長官のような冷静な頭の持ち主がいない。今のトランプを取り囲んでいるのは、長年イランとの戦争を支持してきたボルトンやポンペオのようなアドバイザーたちだ。

実際、トランプのアドバイザーたちは万が一の事態とそれを法的に正当化する可能性について検討しているように見える。

4月には上院外交委員会の公聴会で共和党のランド・ポール上院議員が、2001年に議会で可決された、アルカイダやその関連組織に対する軍事行使権限付与決議によって、トランプ政権にはイランとの戦争を始める権限が認められるのかとポンペオに尋ねた。これに対してポンペオは明確な回答を拒否したが、トランプ政権はイランとアルカイダの間につながりがあると確信していると語った(イラク戦争の開戦前を彷彿とさせる論調だ)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国経済工作会議、来年は財政刺激策を軸に運営 金融

ビジネス

EU理事会と欧州議会、外国直接投資の審査規則で暫定

ビジネス

スイス中銀、ゼロ金利を維持 米関税引き下げで経済見

ワールド

ノーベル平和賞のマチャド氏、「ベネズエラに賞持ち帰
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 2
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎の物体」の姿にSNS震撼...驚くべき「正体」とは?
  • 3
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 4
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 5
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキン…
  • 6
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「正直すぎる」「私もそうだった...」初めて牡蠣を食…
  • 9
    「安全装置は全て破壊されていた...」監視役を失った…
  • 10
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中