イラン戦争に突き進むアメリカ
Trump’s Iran Policy Is Becoming Dangerous
米軍とイランの支援を受けた武装勢力はイラクとシリアで、また多くの船舶が航行するペルシャ湾で、隣り合わせで活動している。「世界最悪の人道危機」の舞台とされるイエメンでは、サウジアラビアとUAEがイランがテコ入れするイエメンの武装勢力ホーシー派への空爆を続行。イスラエルは、シリアにおけるイランの拠点と武器輸送に対する軍事攻撃を繰り返している。こうした極めてキナ臭い状況では、意図的に、あるいは意図せずして、アメリカとイランの間で戦争が勃発する可能性はいくらもある。
もしもイランやその代理勢力がアメリカの圧力に対して、アメリカを怒らせるような、あるいは地域の重要な石油インフラに大打撃を与えるような方法で対応すれば、事態は急速に手に負えない状態に悪化しかねない。
バラク・オバマ前政権の後半には、両国政府の間に危機管理のための高級事務レベルの対話ルートがあったが、今はそれがない。そして双方の強硬派は争いを望んでおり、緊張を緩和させるよりもむしろ増大させるチャンスを伺っているように見える。
開戦を正当化する理屈を検討
ほかの全ての条件が同じなら、トランプはおそらく中東でアメリカが新たな戦争に携わることを望まないだろう。だが過去が「序章」であるならば、イランが火に油を注ぐような好戦的な挑発をしてくれば、トランプは本能的にそれに(おそらくツイッターで)反応すると予想される。またイランの行動を受けて、右派の献金者や議会タカ派、地域の同盟相手――トランプにイラン核合意からの離脱を強く求めた勢力――がトランプに対して「武力行使すべき」と強烈な圧力をかけることも容易に想像できる。
それにトランプの周囲にはもう、H.R.マクマスター前国家安全保障担当大統領補佐官やジェームズ・マティス前国防長官のような冷静な頭の持ち主がいない。今のトランプを取り囲んでいるのは、長年イランとの戦争を支持してきたボルトンやポンペオのようなアドバイザーたちだ。
実際、トランプのアドバイザーたちは万が一の事態とそれを法的に正当化する可能性について検討しているように見える。
4月には上院外交委員会の公聴会で共和党のランド・ポール上院議員が、2001年に議会で可決された、アルカイダやその関連組織に対する軍事行使権限付与決議によって、トランプ政権にはイランとの戦争を始める権限が認められるのかとポンペオに尋ねた。これに対してポンペオは明確な回答を拒否したが、トランプ政権はイランとアルカイダの間につながりがあると確信していると語った(イラク戦争の開戦前を彷彿とさせる論調だ)。