トランプ大統領と会談した郭台銘・次期台湾総統候補の狙い
この流れから行けば、郭氏は再度トランプ大統領に会いに行くだろうと予測し、動静を見守ることにして、郭氏の次期総統選出馬声明に関して何も書かなかった。
台湾の民意調査では「平和統一反対」84%
静観を決めた背景には、もう一つの要素があった。
それは今年1月6日付のコラム<「平和統一」か「武力統一」か:習近平「台湾同胞に告ぐ書」40周年記念講話>で書いたように、今年1月2日、習近平は「台湾同胞に告ぐ書」発表40周年記念で講話し(以下、「今年の講話」)、2020年の台湾総統選に向けて二つの「脅し」を「台湾同胞」に向けて発しているからだ。
1992年に中台間で認識を共有した「九二コンセンサス」にはあったが、今年の講話では削除されるか変更されている重要な個所を二つ列挙する。
1.「九二コンセンサス」には「一中各表」という表現があったが、今年の講話では、この4文字が削除されている。「一中各表」とは、「一つの中国」は中台双方のコンセンサスとして認識するが、その「中国」が「中華人民共和国」を意味するのか、それとも「中華民国」を意味するのかに関しては、「中台各自が解釈する」という意味である。
2.「九二コンセンサス」は、中台が平等に「共通認識(コンセンサス)」を持つことが基本軸にあったが、今年の講話では、「九二コンセンサス」がいつの間にか「一国二制度」と同じ位置づけになっている。つまり台湾は「中華人民共和国」という国家に所属し、香港やマカオと同じ特別行政区として、形式上「社会主義と民主主義の二つの制度」を実施するという「一国二制度」の形に置き換えられている。
これらに対する台湾の両岸政策協会による民意調査の結果が、今年1月3日に発表されたが、84.1%が習近平の今年の講話による「平和統一」概念に反対しているという結果が出た。平和統一を目指す「九二コンセンサス」は「一つの中国(=中華人民共和国)原則」でしかなく、到底受け入れることはできないというのが台湾国民の意思表示だった。
どんなに経済が重要であっても、国家の尊厳を捨てることはできないという結果が出たのである。
たしかに民進党は下降線をたどっているが、国民党の第一候補とみなされてきた高雄市の韓国瑜(かん・こくゆ)市長の支持率34.2%に比べて、郭氏の支持率は16.3%と低い(4月30日時点)。
調査母体によって支持率の値は異なるものの、このままでは郭氏の総統当選はおぼつかない。出馬するからには絶対に当選しなければならないのが、「郭台銘会長」の立場だろう。