中国版ナスダック「科創板」、規制撤廃でIPO方式一変 投資銀行は淘汰の時代へ
スキルアップ
投資銀行業界では、IPO方式変更への不安や新規案件を獲得しようという意欲を背景に、スキルアップを急ピッチで進める動きが見られる。
科創板は、香港やニューヨークと異なり引き受け金融機関がリスクを共有してIPO株の2−5%を保有することが義務付けられているため、資本基盤を拡充している投資銀行も多い。
申万宏源集団は、投資銀行部門を再編して業界別チームを立ち上げ、ハイテクやヘルスケアなどのセクターの専門家を育成する構えだ。同時に香港への上場を通じて11億6000万ドルを調達している。引き受け部門のマネジングディレクター、Tu Zhengfeng氏は「われわれはグローバルな投資銀行の構造に向かって進んでいる。企業の本源的価値をつかむことの重要性が増しており、そのための専門性が求められている」と説明した。
またこれまでの中国のIPOで形式的なイベントにすぎなかった投資家向け説明会について同氏は、当該企業の株をなぜ買う必要があるか、価格はどのように決まったなどをしっかり伝えなければならなくなったと強調した。
中信建投証券のZhao Jun氏は、投資銀行は特にハイテクセクターのIPO候補企業を掘り当てるために情報ネットワークを強化することも求められるとの見方を示した。
過熱リスク
上海証券取引所幹部のPeng Yigang氏は、上場申請企業や投資銀行の間に不安が広がっていることを認めた上で、多くの関係者からIPOについて取引所側に何が適切なのか答えをくれとの問い合わせがあるが、登録制の下でそれを決めるのは市場だと述べ、理解を求めた。
科創板に上場を申請した企業は既に100社近くに上る。
それでも、当局が少なくとも科創板が始まってしばらくの間、IPOに関して指針を出すのを完全にやめるのかどうか懐疑的な声も多い。予定売り出し額を応募額が大きく上回り、バリュエーションが高騰して市場が過熱化するリスクがあるからだ。
かつて設立された創業板(チャイネクスト)も、滑り出しで投機による相場急伸が起こった挙句、その後急落して投資家心理を冷え込ませて二度と回復せず、新興企業の上場を後押しする試みとしてはほぼ失敗に終わった経緯がある。
上海証券取引所の元チーフエコノミストは「海で泳ぐ前にはプールで泳ぎ方を習わなければおぼれてしまう」と語り、いきなり投資銀行の全面的な裁量に任せることに懸念を示した。
(Samuel Shen記者、Julie Zhu記者)
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