トランプ「25%」表明に対する中国の反応と決定に対する中国の今後の動向
それぞれ列挙するのは控えるが、たとえば広東を中心とした4Kを代表とするスーパー・ハイビジョンの生産高は、全称の総生産高の3分の1を占めており、広東経済を牽引する新たな駆動力となっており、山東省でもスマート交通運輸の導入により、第1四半期の前年度増加率は21.2%となっているそうだ。
今後はビッグデータ、AI、IoTなどを中心としたスマート化が中国全土で爆発的に飛躍することが考えられるとしている。なぜならそのためのネット使用の前年度比成長は136.1%に及んでいるからだという。特に華為技術(Huawei)のクラウドAIチップや5G技術が顕著な発展を遂げ、こういったデジタル技術による経済規模は、中国のGDP規模の34.8%を占めるとのこと。
3.第1四半期の中国貿易黒字は75.2%
中国商務部系情報サイトの「中商情報網」は6日、「中国の第1四半期の貿易黒字は昨年同期と比べて、75.2%拡大した」と報道した。特に一帯一路沿線国との輸出入額の増大が顕著で、ロシア9.8%、サウジアラビア33.8%、エジプト18.3%などの増加率となっているとのことだ。
まだまだ枚挙にいとまがないが、中国は自国が台頭する過程で、必ずアメリカとの間に葛藤が生じるだろうことを早くから見越して、「一帯一路」だけでなく、アフリカ54ヵ国、BRICS+22ヵ国など、米国との貿易が遮断されても生き残れるように着々と準備を進めてきた。日本への秋波も、その一つだ。こういった動きは全て拙著『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』の第五章で詳述した。
10日の米中通商会談
5月10日、日本時間13時1分の時点で、米中通商交渉は折り合わず、トランプ大統領が言った通り10日から、中国からの10日以降に出荷される輸入品に25%の関税がかけられることになったようだ。中国も報復関税で応じることだろう。その行方は米中トップによる直接会談まで待つしかない。
ただ上述のように、残念ながら、これにより中国経済が必ずしも壊滅的打撃を受けるわけではないという側面があることも見逃してはならないだろう。この事実は日本の経済界関係者にとっては、経営政策決定の上で重要なファクターの一つになるのではないかと推測される。
日本のメディアでは「習近平のメンツが丸つぶれ」とか「習近平にとっては進むも地獄、退くも地獄」といった、日本の読者・視聴者を喜ばせる言葉が躍っているが、そういった日本人の耳目に心地よい言葉は一時的に愉快ではあっても日本の国益にそぐわない。
不愉快でも、われわれは中国の現実を直視しなければならないのである。それによって日本の国策を立てていくのが、日本の国益に沿うのではないだろうか。
2月14日付けコラム<米中交渉――中国「技術移転強制を禁止」するも「中国製造2025」では譲らず>にも書いたように、米中貿易摩擦の根幹はハイテク国家戦略「中国製造2025」にある。中国はこの戦略に国運を賭けている。絶対に譲らないことだけは肝に銘じておくべきだろう。この米中ハイテク戦争を米中貿易摩擦を分析する際の根幹に置かないと、真相は見えてこないと確信する。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』(2018年12月22日出版)、『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』(中英文版も)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など多数。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。