最新記事

中国

トランプ「25%」表明に対する中国の反応と決定に対する中国の今後の動向

2019年5月10日(金)16時00分
遠藤誉(筑波大学名誉教授、理学博士)

中国の構造改革に対するトランプ大統領の批難に関しては「国有企業に集中的に投資することなど、他国の社会制度に関して、トランプは何を内政干渉してるんだ。言語道断!」と切り捨てた。

なお、外商投資法は、3月7日付けコラム<全人代「一見」対米配慮の外商投資法>をご参照いただきたい。

中国の貿易データが示す今後の動向:新興市場と戦略的新興産業

1.新興市場に関して

中国共産党が管轄する中央電視(テレビ)局CCTVは5月9日、「海関(税関)総署が8日に中国の対外貿易輸出入の2019年第1四半期(今年1月から4月)総額が9.51兆元(157兆円)を超えたと発布した」と報道した。全体の前期比は4.3%増。文書では「央視網」に書いてある(アクセスに時間がかかる時もある。タイムアウトしたらお許し願いたい)。

特徴的なのは民間企業の輸出入増加が11%に達したことと貿易相手国が多元化したことだという。EU諸国やASEAN諸国および日本との輸出入が伸びているそうだ。中でも「一帯一路」沿線国との輸出入が飛びぬけて増加している。ASEANは9%、ラテンアメリカは15.1%、アフリカは8.9%の増加率で、「一帯一路」沿線国との貿易総額は2.73兆元(45.0兆円)で規模が大きく、前年度増加率は9.1%である。貿易相手国が多元化していることを物語っている。

中国はこれを「新興市場」と名付け、これからは「新興市場との貿易」が中国の貿易の「ブースターロケット」の役割を果たすと税関総署の分析官は分析している。

専門家は、「中国には最も大きな速度で成長を日々遂げている世界最大規模の中間層がいる。これは消費成長に関して巨大な潜在力を持っていることを意味する。つまり開放発展を拡大している中国は、"世界の工場"の機能をまだ持ちながら、同時に"世界の市場"なのだ」と解説した。(解説はここまで。)

これらを強調する目的は、「中国は何もアメリカ一国だけと貿易をしているわけではないので、アメリカが脅しを掛けてきても、痛くも痒くもない」ということを言いたいのだと判断される。

2.戦略的新興産業に関して

5月9日のCCTVは、「今年の第1四半期の、人工智能(AI)を含む戦略的工業である新興産業の伸びは、前年比で6.7%となった」と発表した。それを「証券コンサルタント内部参考」が文書化している。

中国ではハイテク国家戦略「中国製造2025」が対象としたハイテク技術によって一気に加速した産業群を「戦略的新興産業」と命名して、猛烈な勢いで研究開発を促進している。CCTVによれば、たとえばハイテク医療機器設備などの製造業は14.0%、電子通信設備製造業は7.9%、航空航天(宇宙)製造業は7.9%の増加率をそれぞれ示しているという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中