最新記事

極右

絵文字や自撮りのメッセージで結束狙う欧州極右勢力、分断に終止符か

2019年4月15日(月)10時15分

だが、欧州議会選の後にこうした状況が変わると期待する声もある。

「強大な会派を離れて弱小会派に参加するのは政治的な決断として困難だが、強力で成長している会派に参加するために今の会派を離れるのであれば、それほど困難ではない」と、ポーランドのPiS議員で、欧州議会の「欧州保守改革(ECR)グループ」に属するリシャルト・レグトコ氏は話す。

「今の状況を変える現実的なチャンスが訪れるのは、これが初めてだ。こうした政治的な、いやイデオロギー的な独占状態がある程度弱まる可能性がある」

孤立を脱して

極右勢力の間の連携は、依然として、もっぱら個人的な人脈に限られている。国内で長い間孤立しており、国外での影響力を持っていなかったリーダーたちがお互いの集会に参加する場合、自分たちが泡沫勢力ではないということをアピールする狙いがある。

「お互いにお墨付きを与えているということだ」と豪グリフィス大学政治・国際関係大学院のダンカン・マクドネル教授(政治学)は説明する。だが、極右勢力は自らが「新たな波の一部」であるという認識を強めつつあると同教授は言う。

各世論調査によれば、「ドイツのための選択肢」(AfD)は次期欧州議会でさらに多くの議席を獲得する可能性があり、サルビーニ氏のENFグループに参加するかもしれない。また、ティエリ-・ボーデ氏率いるオランダの「民主主義フォーラム」(FvD)も欧州議会で新たに4議席を獲得する可能性があり、ポーランドのPiSが属するECRグループに参加すると表明している。

欧州懐疑派の各グループにもてはやされているのが、スペインの極右政党ボックス(VOX)である。昨年12月のスペイン地方選挙で勝利を収めたが、その時点までは、欧州を席巻するポピュリズムの流れに加わることに抵抗していた。

現在、ポーランドのPiSやサルビーニ氏の同盟がVOXに誘いをかけている。だがサンティアゴ・アバスカル党首は、次期欧州議会を見据えて「われわれがどこの会派にも属さないということはあり得る」とロイターに語った。複数の世論調査によれば、VOXの議席は現在のゼロ議席から約5議席になる可能性がある。

VOXはカタルーニャ自治州独立を巡る国内の対立に乗じて勢力を伸ばした。同党はカタルーニャ州をスペインに欠かせない一部とみなしているが、他の極右政党の中には意見を異にするところもある。

「彼らがカタルーニャによる(分離独立主義者の)クーデターを支持しているというのは、(協力する上で)非常に大きな障害になっている」とアバスカル党首は言う。

サルビーニ氏の同盟の外交顧問ザンニ氏は、極右政党が同じ会派にまとまらないとしても、EUの政策に影響を与える、あるいは阻止するために協力を拡大することになるだろう、と話す。

前出のデニソン氏は、「膠着(こうちゃく)状態が長引き、長期的に、EUが実効的な主体であるという考え方が損なわれてしまうリスクがある」と語る。

だが、歴史の浅い右派政治グループは、政党としての規律が非常に弱いと欧州議会のストラテジストは言う。

「欧州懐疑派は、多種多様な羽毛でできた羽のようなものだ。力強く羽ばたけるかは怪しい」と、主要な中道右派グループであるEPPのある高官は語った。

(Alissa de Carbonnel記者、Giulia Paravicini記者 翻訳:エァクレーレン)

[ブリュッセル ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20250225issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中