「日本越え」韓国経済の落とし穴
また、高い所得水準を維持するためには、グローバル競争の中を生き抜く高い技術力が幅広い分野で求められるが、対日・対欧貿易赤字が示す通り、現状において韓国は、主力産業である半導体や家電、自動車など多くの分野で、競争力維持のため高品質な生産設備や部品、原材料を日本や欧州からの輸入に依存している。具体的な数字を示すと、韓国は2018年、697億ドルの貿易黒字を稼ぎ、国・地域別では中国(含む香港)996億ドル、ASEAN主要国406億ドル、米国139億ドルが黒字の上位国に並んだ一方で、産油国の多い中東は645億ドル、鉄鉱石の産地である豪州を含む大洋州も88億ドルの赤字であり、日本も241億ドル、EUも46億ドルの赤字であった。
そのため、中長期的に見れば韓国は技術面で先行する日米欧を追いかけてはいるが、工業国として急速に力をつける中国に追い上げられ、成長余地は狭まる一方である。グローバルな競争力が低下すれば、ウォン相場安定の源泉である貿易収支の黒字幅は縮小、場合によっては赤字に転じる可能性すらある。いかにして今後も技術力、製品力を高めていくかが持続的な成長への大きな課題であり、その道のりはこれまでのように他の先進国によって踏み固められた平坦なものではない。
日韓の「ケンカ」で得するのは誰か
さらに言えば今後、アジア各国が米中2大国の狭間でそれぞれの立ち位置を模索する中、高い中国依存の経済構造は必ずしもバランスの良いものではなく、既に取り組みつつある脱中国依存の動きを加速させる必要があろう。そのうえで、米中と適度な距離感を保ちつつ自国の利益を確保するため、自らの存在感を両国に十分認識させる必要がある。しかしながら、それを単独で実現することは、特に中国の経済成長によって徐々に困難となっていくであろう。
前述のような日本と韓国の貿易関係を見れば、両国が相互依存の下で経済成長を続けていることは明らかで、米中が軸となる新たなグローバル市場において一定の存在感を維持するために、経済的な連携は一段と重要となるはずである。政治的な対立によって日韓両国が競争力を削がれることで、誰が利益を得るのか――。経済的な観点から、日韓双方に冷静かつ合理的な判断が求められるということだろう。
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