米欧、そしてロシアも「共通の脅威」中国に立ち向かうべき
Ignoring China at Their Own Peril
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INF全廃条約に署名する米ソ首脳(1987年) REUTERS
<ロシアをめぐる米欧対立はどちらの得にもならない。ロシアにも、欧米の陣営に加わるか、中国と対峙するかの選択肢を与えなければならない>
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2月20日の年次教書演説で、ワシントンを一瞬で壊滅させると脅してみせた。最近のプーチンは自慢の新型ミサイルを盛んに誇示するようになった。そして必要なら、新兵器の使用をためらわない姿勢も。
プーチンは、アメリカが中距離弾道ミサイルを欧州に配備すればモスクワに5~7分で到達すると指摘。ロシアが先に新しい中距離ミサイルを欧州に配備することはないが、アメリカが1987年の中距離核戦力(INF)全廃条約以前の核配備体制に回帰すれば、すぐに報復すると警告した。当時は旧西ドイツにパーシングIIミサイルが配備されていた。
プーチンは一連の新型ミサイル兵器を誇らしげに披露した。核搭載可能な極超音速空対地ミサイル「キンジャール」、大型ICBM(大陸間弾道ミサイル)「サルマート」、原子力巡航ミサイル「ブレベストニク」、極超音速滑空弾頭「アバンガルド」......。性能が宣伝どおりなら、いずれも迎撃は困難だ。
さらにプーチンは新型水中ドローン(無人機)「ポセイドン」も自画自賛した。全長約20メートル、100メガトンの弾頭を搭載可能とされる自律式原子力魚雷で、ニューヨーク州などのアメリカの沿岸州を丸ごと壊滅させる性能を持つという。
これまでと同様、プーチンは「主敵」アメリカとその同盟国に激しい非難を浴びせ、「母なるロシア」が攻撃されれば「意思決定の中枢」、つまりワシントン、ブリュッセル、ロンドン、ワルシャワなどの各国首都をたたくと宣言した。
プーチンの怒りの原因は、トランプ政権によるINF条約の破棄決定だ。同条約で禁止された射程のミサイルを配備したロシアの明白な違反行為を受けての措置だった。
中国の台頭を許した甘さ
プーチン演説の数日前、ドイツのアンゲラ・メルケル首相はミュンヘン安全保障会議の演説で、同条約の破棄を支持すると発言した。メルケルが米政府の政策に賛成するのは珍しい。
だが、残りの外交政策には激しい批判を浴びせた。イラン核合意からの離脱を決め、ドイツ製自動車に関税をかけると脅し、突然アフガニスタンとシリアから撤退すると発表したトランプをメルケルは非難した。
アメリカの元政策担当者の間では、こんな臆測が広がった。トランプはNATO条約の第5条にある集団防衛の約束を守る気がないのではないか、あるいはNATOそのものから脱するつもりではないか......。