「途上国支配に最も有効な方法は債務漬けにすること」ジグレール教授の経済講義
アフリカの農民の大半は、化学肥料も作物用の種も入手できず、農業銀行もなければ、強力なトラクターも、灌漑設備もない。というのも、各国政府は対外債務に押しつぶされており、国庫には農業に投資するお金が一銭もないからだ。
少しでも入ったお金――セネガルは落花生、マリは綿の輸出で――は、債務利子や減価償却(返済)の名目で、そのままヨーロッパやアメリカの銀行に行ってしまう。結果、農業に投資するお金が一銭も残らない。
ちなみにサハラ砂漠より南のアフリカでは、人工的に灌漑が行われているのは農地の3パーセントのみ、その他の農地では、いまだに天水農業が行われ、3000年前とまったく変わらないのだ。
農業機械に関しての状況も悲惨だ。世界ではトラクターが約4000万台使われているが、動物による農具がまだ3億台もある。この問題が決定的になっているのだね。
たとえばカナダ中西部の肥沃な地サスカチュワン州の大平野では、200馬力のトラクターのおかげで農民がひとりで2000ヘクタールを耕している。しかし、発展途上国の農民27億人の大半は、現在もなお鉈(なた)や鋤(すき)だけで畑を耕している......。
●この債務はどこからくるの?
――まず、これははっきり言っておく。債務は、世界の弱肉強食の理念と、グローバル化した金融資本のオリガーキーの立場を保証しているということだ。植民地からの独立が続いた時代に、世界銀行やIMF(国際通貨基金)といった国際組織が、第三世界の国々に莫大な資金を貸付け、西欧の資本主義をモデルにした工業化と、インフラの開発を推奨した。
植民地は消滅したが、しかし、旧宗主国は引き続き旧植民地の資源を開発し、場合によっては市場も開設した。これらの国の一部の独裁政権は貸付けを利用して武器を購入し、戦争をして、国民には圧政をしいた。
貧困国が銀行に利息も減価償却も払えなくなり、万策尽きると、返済の猶予や再分割、さらには債務の減額まで頼む事態に陥ってしまう。そして銀行側はこの状況を利用する。つまり、債務国の要請を――いずれにしろ一部――、きわめて厳しい条件つきで受け入れるのだ。
条件とは、鉱山や電気通信の公共サービスなど、採算性のある少数企業を民営化させ、外国――つまり債権国――へ身売りさせる。あるいは、これらの国で事業展開する多国籍企業への不当な税制の特権、自国軍に装備する武器の強制的な購入、などだね。
●ということは、そうなると、債務国はお金がないので国を正常に運営できず、独立性を失うのでは?
――たしかにそうだね、ゾーラ。債務の支払いができなくなると、国は国家予算に組み込まれた支出を減額しなければならなくなる。
それで苦しむのは誰だろう? いわずとしれた国民で、最初にくるのが底辺にいる貧困層だ。ブラジルの大地主や、インドネシアの支配階級は、公立学校が閉鎖されても困らない。子どもたちはフランスやスイス、アメリカの学校で勉強しているからだね。
公共病院が閉鎖されたら? これも気にしない。家族はジュネーヴの大学病院やフランスのヌイイ=シュル=セーヌのアメリカン病院、ロンドンやマイアミのクリニックで治療を受けている。
負債の重圧は最初に貧困層を苦しめるのだ。