最新記事

資本主義

「途上国支配に最も有効な方法は債務漬けにすること」ジグレール教授の経済講義

2019年3月8日(金)10時05分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

だけど、いまも、この負債がふくらみ続けているのはどうしてなの?

――そのいちばんの原因は現在、貿易の不均衡にある。債務国は原材料、とくに農業――綿、コーヒー、砂糖、落花生、ココアなど――の輸出国であることが多いのだが、そのために必要な生産財―機械やトラック、薬品、セメント......など――は輸入しなければならない。

ところが世界市場では、この20年間、生産財の価格が6倍以上になっているのに対し、農業産品の価格は下がりつづけている。一部の価格、コーヒーや砂糖は崩壊しているといっていいだろう。こうして債務国は、破産を避けるために新たな借り入れ契約を結ぶはめになっているのだ。

負債のもう1つの原因は、発展途上国の国家財政が乱脈をきわめていることだ。買収行為がはびこり、スイスやフランス、アメリカなど先進国の民間銀行と積極的に連携した組織的な汚職が猛威をふるっている。

旧ザイール、現コンゴ民主共和国の独裁者だった、故ジョセフ・デジレ・モブツ元大統領一家の財産は、約40億ドルだったと言われている。これらは先進国の銀行に隠されていた。彼が亡くなったとき、コンゴ民主共和国の対外債務は130億ドルにもなっていた......。

もう1つの原因としてあげられるのは、ここに農業産品やサービス業、産業、商業の多国籍企業、あるいは国際的な銀行がかかわっていることだ。これらさまざまな大企業は現在、発展途上国のおもな経済分野を支配し、多くはけた外れの利益を得ている。

しかし、これらの利益の大部分は、毎年、ヨーロッパや北米、中国、日本にある本社に外国為替の形で送還され、現地の貨幣で再投資されるのはほんの一部だけだ。

※第1回:「給与所得者の保護政策はどの国でも後退している」ジグレール教授の経済講義

※第3回:「ハゲタカファンドは人さえ殺している」ジグレール教授の経済講義


資本主義って悪者なの?――
 ジグレール教授が孫娘に語るグローバル経済の未来
 ジャン・ジグレール 著
 鳥取絹子 訳
 CCCメディアハウス


ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 6
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 9
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 10
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中