自国経済を崩壊させる独裁者に手を貸す独裁者
Poor Man’s Empire
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外交でリスクを取り過ぎれば国内経済が疲弊しかねない ILLUSTRATION BY ALEX FINE
<外国への干渉で国民のカネが消えていく――。プーチンが国民生活を犠牲にして手にするものとは?>
昨年末の会見で、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は投資による「国内経済の質的向上の必要性」を認めた。だが外交面での浪費はその後も続き、経済重視に転じた気配はない。
12月にはベネズエラに核弾頭搭載可能な超音速戦略爆撃機ブラックジャックを2機も飛ばした。「2つの腐敗した政府が税金で自由を抑圧し、両国の国民が犠牲になっている」。マイク・ポンペオ米国務長官はそう批判した。ベネズエラの経済は悲惨だ。IMFは同国のインフレ率が年内に年率1000万%に達すると予測している。
アメリカも過去に、国内経済を犠牲にして朝鮮半島やベトナム、アフガニスタン、イラクなど戦争に大金をつぎ込んできた。冷戦期には各地の貧困国(ニカラグア、アンゴラ、ソマリアなど)へのソ連の影響力に対抗するために巨費を投じた。
それでもアメリカは多くの場合、自国の経済を強化し、世界経済の成長を促すことに力を入れてきた。1997~98年のアジア通貨危機で、FRB(米連邦準備理事会)は国際社会の対応を支援しただけでなく、危機の影響を受けた国々の援助でも主導的役割を演じた。10年後に発生した世界金融危機でも対策の先頭に立ったのはFRBだった。
貿易でも同様だ。アメリカのオバマ政権はTPP(環太平洋経済連携協定)の合意に向けて各国との交渉を主導した。その後のトランプ政権はTPPを離脱して中国と貿易戦争を始めたが、カナダやメキシコ、韓国との貿易協定は強化した。1月にはEUや日本との間で、不公正な貿易慣行の是正やイノベーションを阻む障壁の撤廃を進めることで合意している。
だが、ロシアを駆り立てているのは政治的な野心だ。周辺国に影響力を及ぼし、超大国の地位に復帰したいらしいが、そのための莫大な支出で自分の首を絞める結果になっている。
ウクライナ東部での紛争とクリミア併合、それに対する欧米の経済制裁で、ロシア経済は打撃を受けた。ブルームバーグ・エコノミクスによると制裁の影響で過去4年間にロシアのGDPは最大6%押し下げられた可能性があり、同地域への非軍事的支援でも年0.3%圧迫されている恐れがある。ジョージア(グルジア)とモルドバで、親ロシアの分離独立派が実効支配する地域への財政支援も必要だ。
平和的な国際協力も進展が思わしくない。例えばユーラシア経済同盟(ロシア、カザフスタン、ベラルーシ、アルメニア、キルギス)だ。現状でも加盟各国は「同盟外」の国々と活発に貿易を行っている。