ベネズエラ国民のためにトランプ政権が今すべきこと
Venezuela’s Finest Hour
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1月29日にマドゥロは軍事演習に出席 CARLOS BARRIA-REUTERS
<2人の大統領が対立する緊迫のベネズエラ情勢――アメリカに求められるのはロシアをにらんだ行動だ>
勝つのは独裁的なチャベス主義者の政権か、弾圧されてきた民主派の野党陣営か――。ベネズエラの権力闘争が決着を迎える日は近いかもしれない。
野党陣営を率いるフアン・グアイド国会議長は1月23日、「暫定大統領」就任を宣言した。ニコラス・マドゥロ大統領から権力を奪取することに成功すれば、その影響はベネズエラ政界ばかりか国際的なエネルギー市場に及び、米ロの対立激化を引き起こすことにもなるはずだ。
論点になっているのは、マドゥロによる統治継続の正当性だ。マドゥロは17年8月、新憲法を起草するとして制憲議会を設置し、野党が多数派の国会から立法権を奪った。昨年5月に実施した大統領選では、野党がボイコットし、国会と中南米諸国の大半が正当性を認めないなかで再選を宣言。今年1月10日に2期目をスタートさせた。
グアイドが暫定大統領として政権を率い、自由で公正な選挙を通じて民主主義への移行を実現できるよう、あらゆる政治的ツールを迅速かつ断固として駆使する構えを取る。これこそ、アメリカがすべきことだ。
グアイドの宣言の直後、ドナルド・トランプ米大統領はグアイドを暫定大統領として承認するとの声明を発表した。称賛に値する決断だが、さらに多くが求められている。次の一歩として外交や情報活動、場合によっては秘密工作に踏み切るべきだ。
エネルギー市場への影響
確かに、こうした「賭け」のリスクは大きい。失敗すれば、飢餓や医薬品不足による疫病の蔓延、社会不安の渦中にあるベネズエラで暴力がエスカレートする恐れもある。ブラディミル・パドリノ・ロペス国防相は先日、軍部はマドゥロ政権を支持すると表明した。軍がマドゥロ側に付いたのはグアイドにとって大きな打撃であり、アメリカの支援を妨げる障害になる。
反米左派のマドゥロ政権の存続は、米政権と中南米の中道右派勢力の敗北を意味するだけではない。アメリカが失敗すれば、エネルギー市場は極めて不安定になり、ベネズエラが長らく手を組むロシアの強硬措置を招くことになりかねない。
アメリカやヨーロッパ、さらにベネズエラの民主主義回復支援のため米州14カ国が17年8月に設立したリマ・グループが支持するにもかかわらず、グアイドが権限を握れなければ、欧米はアメリカの「裏庭」である中南米でさえ政策を実現できないと解釈されるだろう。ロシアや中国がそこに戦略的弱点を見いだしたとしても不思議はない。
近年は石油生産も製油能力も落ち込んでいるとはいえ、ベネズエラは指折りの産油国だ。原油確認埋蔵量は世界一の3030億バレル強。ベネズエラ石油公社(PDVSA)の日産量は120万バレルに激減しているが、エネルギー市場での存在感は大きい。
驚くことに、PDVSAは石油製品分野におけるアメリカの主要なパートナーでもある。年間150億ドル規模に上る両国の2国間貿易のうち、大部分を占めるのが石油だ。