最新記事

労働

年間100万円、メイドさんを雇って得た「気づき」 高い?安い? 主婦の仕事に比べたら......

2019年2月4日(月)20時00分
中野円佳 (ジャーナリスト ) *東洋経済オンラインからの転載

そのほかにも、2歳の娘を見ていてくれるようにお願いしたときに、けがをしても知らぬ顔......といったことが相次ぎ、指摘をしても改善が見られなかったために、子どもたちを安心して任せておけないと感じるようになった。

お風呂の後に着替えさせるといった「ちょっとした手助け」が必要なときにも、子どもたちも「ママがいい」となり、メイドさんはそれを言われるとすぐに諦めて自室にこもってしまう。子どもたちが15時半に帰ってきてからの子育てはほとんど私がやることになった。

こうした問題をどうにかするマネジメント力も器量も残念ながらこちらにはなかった。年間100万円をかけてのフルタイムのメイドさんを雇っているわりには仕事時間の捻出につながらない――。話し合いをし、結局円満にお別れをすることになった。

メイド経験が教えてくれたこと

「相手を尊重することと、ルールをきちんと決めて守ってもらうことは違う」というのは個人的な反省だが、いずれにせよ、家事は毎日依頼をするには結構なマイクロマネジメントが必要になる。それには向き不向きがある、というのが実感だ。

わが家はマイナートラブルで済んだが、金品を盗まれた、雇用主のプライバシーを近所に暴露された、うそをついて帰国してしまったなどのトラブルも頻繁に耳にする。何人もメイドを雇ってようやく相性のいい相手に出会ったという話も聞けば、シンガポール人夫妻でフルタイム共働きをしていても学童などを活用してメイドを雇わない、あるいは子育てはあくまでも親の役割でメイドには家事のみをお願いする、という家庭もある。

1年間メイドさんを雇って、やめることになったわけだが、気づかせてもらったなと思うこともいくつかある。

1つは、やはり家事は有償であり、誰かの役割として存在するれっきとした仕事だということ。わが家はメイドさんがいなくなることを機に、それでも家庭が回るのか話し合い、夫も自分が担う家事が増えることに同意をした。

今はシンガポール人の方にパートで掃除などを週1でお願いすることにし、それに月2万円程度をかけているが、月8万円-2万円の6万円がかからなくなった。結局日常的な家事の大半をやることになったのは私だが、その労働は私の頭の中では月6万円分。

「主婦の労働はいくらか?」という議論は半世紀以上前からされており、大ヒットドラマとなった「逃げ恥」とその原作の漫画でも議論が再燃したことが記憶に新しい。家事に割く時間に私が稼げる機会費用から換算すればまた違った計算になるが、フリーの物書きとして1日数時間が収入に直結するわけではなく、むしろ「外注したらいくらか、それを自分でやることで節約している」という発想で自分の月収に対する自己評価を6万円上乗せしてイメージするようになった。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イスラエル、ハマスが人質リスト公開するまで停戦開始

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中