和解か決裂か、重大局面迎える米中貿易協議 主な対立点と見通し
今週は中国の劉鶴副首相がワシントンを訪れ、米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表やムニューシン米財務長官と閣僚級貿易協議を行うため、両国の話し合いは重大局面を迎える。写真は米中の国旗。米バージニア州の米国防総省で2018年11月撮影(2019年 ロイター/Yuri Gripas)
今週は中国の劉鶴副首相がワシントンを訪れ、米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表やムニューシン米財務長官と閣僚級貿易協議を行うため、両国の話し合いは重大局面を迎える。
米国側は、知的財産保護や産業補助金、市場アクセスなど幅広い分野で3月2日までに合意できなければ、中国製品に新たな関税を課す方針だ。
以下に両国の主な対立点や協議の結果が今後に与える影響などをまとめた。
●米中は何を争っているのか
米国の対中貿易赤字が何年も続き、米政府によると自分たちの知的財産や企業秘密を中国は強制移転や窃取という形で組織的に入手している。そこでトランプ政権は昨年、米企業がより公平な土俵で競争できるように中国が経済モデル構造を変更するよう要求した。具体的には米企業が中国の提携先に技術移転を強制されないようにすることや、米国の知的財産権の全面的な保護を迫っている。
●協議において重視されているのは
USTRの説明では、最も基本的なレベルで将来のハイテク産業における優位をどちらが占めるかだ。中国は2025年までに航空宇宙、ロボット、半導体、AI(人工知能)、新エネルギー車など戦略的な10分野の技術力を引き上げることを決意している。
米政府としては中国がそうした技術力強化を図ること自体は差支えないものの、米国のノウハウを不正に獲得して実現させるのは許容できない。また中国政府が国有企業を強力に支援している構図が過剰生産につながり、市場メカニズムに依拠する米企業の競争環境を悪化させているという。
●中国側の言い分は
中国当局は、数々の米国の行動を、全体として世界経済で優位に立つのが必然となっている中国を抑え込もうとする取り組みの一部とみなしている。中国が米国企業に技術移転を要求したり強制しているとの見方は否定し、あくまで米中企業間の商業的な取引だと主張。同時にトランプ大統領に対して、対米貿易黒字を直接的に減らすために大豆やエネルギーを含む米国製品の購入拡大を提案している。
また輸入車の関税引き下げといった市場開放や、いくつかのセクターで外資系企業に中国合弁の過半数株保有を認める規制緩和を実施した。
●米国のこれまでの対中措置は
トランプ大統領は既に2500億ドル相当の中国製品に輸入関税を課している。機械製品や半導体など500億ドル相当には税率25%、多くの化学製品や建材、家具、一部家電などには税率10%を適用。今のところ、携帯電話やコンピューター、衣料品、靴など大半の消費財は関税対象外だが、3月2日までに協議がまとまらなければ、新たに約2670億ドル相当、つまり米国が輸入する中国製品の実質的な残り部分全てに新たな関税が導入される。
●中国は報復策を講じたか
講じている。大豆、牛肉、豚肉、シーフード、ウィスキー、エタノールなど500億ドル相当の米国製品に25%、液化天然ガス(LNG)、化学製品、冷凍野菜など600億ドル相当の米国製品には5─10%の関税を課した。主にボーイングが製造する商用機はまだ関税対象となっていない。トランプ氏と習近平国家主席は昨年12月、協議中は新規関税導入を見送ることで合意した。中国側は米国製自動車への関税適用も停止し、米国産大豆買い入れを再開している。