最新記事

米中激突:テクノナショナリズムの脅威

和解か決裂か、重大局面迎える米中貿易協議 主な対立点と見通し

2019年1月30日(水)08時49分

●協議の進展状況は

米国は、中国が2018年春に提案した米製品購入拡大策を拒否し、対中関税導入手続きを進めた。そして12月のブエノスアイレスにおける両国首脳会談では、強制技術移転や知的財産保護、非関税障壁、サイバー攻撃などの構造問題を話し合うことが決まった。ただこうした問題に関して今月行われた協議ではまだ進展は乏しい。中国側はその代わりとして対米黒字解消のために米国製品の買い入れを増やすことを提案した。

●米国は製品購入を基本とする提案を受け入れるか

トランプ大統領は合意達成に楽観的で、中国経済の勢いが弱まっているので彼らは交渉しようという動機があると発言している。しかしトランプ氏のアドバイザーは、大統領は知的財産とそれに関連する問題で中国に対する構造改革要求を緩めるつもりはないと話す。

ロス商務長官ら一部の政権高官は、今週の閣僚級協議に対する期待が高まり過ぎるのを抑えるため、両国は問題解決からかなり距離があるとくぎを刺した。

米国の主な要求の1つとして、中国が約束した構造改革の進ちょくを定期的に点検する仕組みを導入することがある。この仕組みでは、米国は恒久的に関税導入の脅しをかけられる。

●今週の協議はどうなるか

両国ともに一定の進展があったと表明する可能性はあるが、懸案の構造問題でまたも行き詰まりが見えれば、3月までの合意にとってマイナスの材料と受け止められるだろう。投資家は米国の追加関税導入に備えることになる。

もっとも貿易協議は土壇場まで予断を許さない傾向があり、最終的な結果は2月末まで判明しそうにない。何らかの合意ができても、トランプ氏と習氏の承認が必要だ。

もしそれなりの進展があれば、両国は協議期限を延ばして交渉を続ける事態もあり得る。北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉でもそうした動きがしばしば見られた。

[ワシントン 28日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


※ニューズウィーク日本版2019年2月5日号は特集「米中激突:テクノナショナリズムの脅威」。
なぜ中国はAIの競争で欧米より優位にあるのか、アメリカはこの戦争をどう戦うべきなのか――。詳しくは「米中激突:テクノナショナリズムの脅威」特集をご覧ください。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米財政赤字、2月は4%増の3070億ドル 歳出入と

ワールド

プーチン氏、クルスク州訪問 参謀総長「ウクライナ軍

ビジネス

EUが報復関税なら「対応」へ、トランプ氏表明

ワールド

ウクライナ停戦へ前向きなメッセージ受け取る、実現は
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 2
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「腸の不調」の原因とは?
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    株価下落、政権幹部不和......いきなり吹き始めたト…
  • 5
    SF映画みたいだけど「大迷惑」...スペースXの宇宙船…
  • 6
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 7
    トランプ第2期政権は支離滅裂で同盟国に無礼で中国の…
  • 8
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎…
  • 9
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 10
    「トランプの資産も安全ではない」トランプが所有す…
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 5
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 6
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 7
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 8
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 9
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 10
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中