テクノナショナリズムの脅威──米中「新冷戦」とトランプの過ち
THE WRONG TRADE WAR
それだけではない。在中国米商工会議所による2017年の調査では、会員企業の60%が広範に及ぶ保護主義とその加速傾向を指摘し、向こう数年で市場開放がさらに進むとはほとんど(あるいは全く)思えないと回答していた。WTOの一員になれば外国企業に対して技術移転を要求することも減ると期待されたが、そうはならなかった。むしろ「中国製造2025」の下で外国企業への圧力は高まっている。
外国企業は今後、製造・組立拠点を中国国内に設け、往々にして対等未満の合弁事業パートナーとして中国企業に協力しなければならない。さらにマイク・フロマン元米通商代表部代表は、「必要とあれば中国政府が国内企業を守るために大幅な関与を行う」ことも示唆している。
また米議会の米中経済安全保障検討委員会の政策アナリストであるキャサリン・コレスキーは、報告書で「中国はアメリカなどの市場経済国家の開放性を利用して最先端の研究やデータへのアクセスを確保し、資本投下を通じて最先端企業の買収や投資を行い、自国の商品やサービスを海外で自由に売っている。そのために投じられる公的資金の規模と量は、外国企業が中国市場で公正な競争を行う能力を深刻に阻害している」と指摘している。
貿易の専門家たちは、中国の政策を「テクノナショナリズム」と呼んでいる。そして主要テクノロジーの分野で優位に立ちたい中国政府が特に力を入れているのが、AIの活用に欠かせない先端的な半導体の製造だ。
現在、世界の半導体開発をリードしているのはインテルやクアルコムをはじめとする米企業。中国は世界の半導体の50%を消費しているが、調達する半導体の80%は外国製だ。国営メディアによれば、中国は今後10年ほどで自前の半導体産業育成に1600億ドルを投じる考えだ。
<2019年2月5日号掲載>
※この記事は2019年2月5日号「米中激突:テクノナショナリズムの脅威」特集の1記事を一部抜粋したもの。なぜ中国はAIの競争で欧米より優位にあるのか、アメリカはこの戦争をどう戦うべきなのか――。詳しくは「米中激突:テクノナショナリズムの脅威」特集をご覧ください。
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