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米中激突:テクノナショナリズムの脅威

テクノナショナリズムの脅威──米中「新冷戦」とトランプの過ち

THE WRONG TRADE WAR

2019年1月29日(火)06時45分
ビル・パウエル(本誌シニアライター)

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トランプは2018年に中国を狙い撃ちする形で鉄鋼・アルミニウムの輸入制限と追加関税を発動 SHENG LI-REUTERS

そうであれば、中国と対決するのもやむを得まい。実際、既に本格的な貿易戦争が始まっている。ドナルド・トランプ米大統領は、中国からの輸入品2000億ドル相当に10%の追加関税を課した。1月7日に始まった中国との協議で合意が得られなければ、3月には関税を25%まで引き上げると、トランプは宣言している。

対して中国もアメリカからの輸入品に報復的な関税をかけ、大豆その他の農産物の輸入を減らした。アメリカ製品の不買運動も起きている。

予想どおりの展開だが、残念ながらトランプの仕掛けた戦争は間違いだ。彼には、アメリカのような先進国の未来を左右する成長分野の産業が見えていない。鉄鋼やアルミニウムに高率関税を課して中国を罰したつもりになっているが、その一方で中国がアメリカのハイテク企業を締め上げ、競争力を奪おうとするのを野放しにしている。

3月の交渉期限が迫るなか、トランプ政権は今こそ中国の産業政策に、競争を阻害して国内企業を優遇する政策に、異を唱えるべきだ。そうすれば破滅的な貿易戦争のリスクを減らすことができ、中国国内で真の経済改革を進めるきっかけになるかもしれない。それは国際社会だけでなく、中国自身のためにもなるはずだ。

しかしトランプ政権には、「中国製造2025」に対抗する一貫した戦略がない。「AIと5Gが主導する破壊と創造の波は押し寄せている」と言うのは、かつてグーグルの中国部門を率いた李開復(リー・カイフー)。「だが私の知る限り、アメリカ政府の誰もこの大波に乗るすべを知らない」

筆者が列車で李相福に会った2001年は、中国がWTO(世界貿易機関)に加盟した年だった。それは世界経済への復帰を象徴する歴史的な瞬間だった。アメリカを中心とする国際社会も、中国の加盟を実現させるために頑張った。中国のように巨大で可能性に満ちた国を、一定のルールに基づく世界貿易の体制に組み込むのは誰のためにもいいことだと思えたからだ。そして実際、その後の中国は想定外のペースで経済成長を続けた。

今や中国は世界第2位の経済大国であり、あと10年か20年すればアメリカを抜いて1位になる見通しだ。WTO加盟後の中国は、経済の開放政策に後戻りはないと約束した。

だが習政権で約束はほごにされた。中国が「戦略的産業」と位置付ける石油やガス、代替エネルギーや医薬などの分野では、それ以外の分野に比べて外国企業による特許申請が却下される確率が著しく高いと、カリフォルニア大学バークレー校法律技術研究所のマーク・コーエン所長は指摘する。

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