最新記事

中国

米中月面基地競争のゆくえは? 中国、月裏側で植物発芽成功

2019年1月16日(水)13時15分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

CCTVや新華網などが一斉に「中共中央、国務院、中央軍事委員会」が嫦娥4号の月探査に成功したことに対して祝賀の辞を送ったと伝えた。文字化したサイトは、こちらで見ることができる

祝電の中で、「これは習近平同志を核心とする党中央の指導の下、宇宙戦線が自力更生を堅持し自主創新が人類未踏の偉大な成功を収めた何よりの一歩である」という類の礼賛が続いたが、「両弾一星」精神が讃えられていることが注目される。

「両弾一星」とは「弾道ミサイル、核爆弾、人工衛星」の意味で、毛沢東が唱えた国家戦略である。拙著(『「中国製造2025」の衝撃』)のp.225やp.269などで、それが現在の習近平政権に、どのような影響を与えているかを述べた。宇宙開発に関しては、中国は昨日や今日の着手ではなく、1950年代の朝鮮戦争の時から始めている。

米中宇宙競争のゆくえは?

アメリカのオバマ政権がうっかりしている間に、中国は宇宙開発に関しては、どうやらアメリカの一歩先を行ってしまったようだ。

習近平の国家戦略「中国製造2025」の脅威に気が付いたトランプ大統領は、2017年12月11日、「宇宙政策大統領令」を発布し、ペンス副大統領を議長とする国家宇宙評議会を復活させた。その方針に沿って2018年10月5日に開催された国家宇宙会議でペンスは「アメリカが再び宇宙分野でリーダーシップを取ることを全世界に宣言する」と言っている。

しかし、「宇宙政策大統領令」では、「アメリカは、長期的な開発と利用のために月に人類を再び送り、火星とその他の有人ミッションへと続くプログラムを主導する」としているものの、具体的な日程も手段も明示されていない。そもそも予算が審議されていないので、理念はあっても経費の確保が成されていないのである。

そのような中CCTVは1月11日、中国政府のアカデミーの一つである中国工程院の院士で中国月探査総設計師の呉偉仁氏を取材し、「面対面、人類一大歩」という番組を放映している

それによれば嫦娥4号は、アメリカに対して位置情報を発信する発信機を搭載しているという。アメリカの科学者から頼まれて、月面着陸地点をアメリカに事前に知らせてほしいと懇願されたのだとのこと。

呉偉仁は「アメリカの科学者がまた、中継通信衛星"鵲橋号"を使わせてくれないかと言ってきた。鵲橋号の寿命をできるだけ長く保たせて、アメリカに使わせてほしいと頼まれた」と述べている。その科学者は「なんとか近いうちに月の裏側にアメリカの探査機を軟着陸させたいが、どうしても中継通信衛星がないと通信ができないから」と頼んできた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中