最新記事

日本経済

IoTやAI活用で香港、韓国に大きな後れのニッポン 技術者不足を海外に依存する悪循環

2019年1月9日(水)14時59分

日本経済の原動力となるIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、ビッグデータなどの活用で、日本企業は欧米やアジアのライバル企業に大きく後れを取っていることが鮮明になっている。写真は、2016年に東京で撮影(201ロイター/Toru Hanai)

日本経済の原動力となるIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、ビッグデータなどの活用で、日本企業は欧米やアジアのライバル企業に大きく後れを取っていることが鮮明になっている。最も大きな要因は、最先端の技術を駆使する高度デジタル技術者の育成不足だ。

その結果、国内の主要企業では、高額報酬によって海外の人材を確保しようとする動きが広がり、「外国人依存」の現状があらわになっている。このままでは、日本は産業競争力の面でさらに後れをとりかねないとして、政府もようやく本格的な人材育成に乗り出した。

高報酬で外国人材募集

NTTデータは、高度IT技術を活用した新ビジネスモデルを構築するため、内外を問わず人材を募集する。来春をめどに採用し、報酬も従来とは別の新制度を設け、個別交渉次第で高額報酬も準備する。

今や世界中で高度IT人材確保が激しくなり、高報酬を切り札に高いレベルの技術を持つ人材を奪い合う現象が起きている。

海外企業では3000万円-5000万円台での年収提示もあるほか、昨年4月には「ゾゾタウン」を運営するZOZOが、先端技術に詳しい人材を最高年収1億円で採用すると発表した。主要なターゲットは外国人技術者だ。

その背景には、日本人エンジニアの技術レベルでは、技術進歩がめまぐるしい最先端分野で対応し切れないという現実がある。

日本企業の中では、かなり先行して高度デジタル技術を駆使したビジネスを展開しているファーストリテイリングでは、今やグローバルな技術者募集が日常となっている。「国籍を問わず、各拠点でその事業に適したIT人材を現地で募集している」(広報)という。

クラウド、ビッグデータのデータ分析、情報セキュリティ専門家、システム開発分野の各種エンジニアなど現在も募集中だ。

昨年12月のロイター企業調査(400社対象)でも、IoTやAI(人口知能)に関する技術者を十分に確保できていないとする回答が全体の93%を占めた。こうした高度のデジタル技術を導入していない企業は調査対象の6割にのぼり、その理由の多くが「ノウハウやスキルがないため」だった。

企業向けソフトパッケージベンダーのアステリアは「ソフトウエア開発技術者は、ここ数年、100%外国人を採用しており、それなりの高報酬で迎えている」(広報)と説明する。

IoTやブロックチェーンを組み込んだオリジナルソフトの開発エンジニア採用では、能力レベルで絞り込んだ結果として、毎年の採用が外国人だけになったという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中