最新記事

性的暴行疑惑

「ハウス・オブ・カード」の米俳優ケビン・スペイシー、7日に出廷へ──セクハラ、性的暴行疑惑とアーティストの関係とは

2019年1月7日(月)18時00分
小林恭子(在英ジャーナリスト)

「スペイシーのキャリアは終わり」、でいいか?

スペイシーは1959年、米ニュージャージー州生まれの59歳。俳優のみならず、脚本家、映画監督、プロデューサーとしても活躍してきた。

1981年にシェークスピア・フェスティバルで舞台デビューし、映画の初出演は「心みだれて」(1986年)。1991年には舞台劇「ロスト・イン・ヨンカーズ」で、名誉あるトニー賞を得た。

筆者の記憶に残るのは、名優ぶりを見せた「ユージュアル・サスペクツ」(1995年、アカデミー助演男優賞)、奇妙な家族関係をつづる「アメリカン・ビューティー」(1999年、アカデミー主演男優賞)。「本当に、上手な俳優だな」と舌を巻いた。また、宇宙人(?)を演じた「光の旅人 K-PAX K-PAX」(2001年)、大統領選挙を扱った政治ドラマ「リカウント」(テレビ映画、2008年)も忘れられない。今見ても遜色はない、優れた作品に違いない。

しかし、筆者が住むロンドンでも不適切な性的行動に及んでいたかもしれないという身近さに先の動画の気味悪さもあって、スペイシーの新たな作品への視聴には食指が動かない。

現実にはスペイシーのキャリアは終わったも同然だ。もし疑惑が真実で、何らかの犯罪が行われたとすれば、著名な俳優であろうとなかろうと、司法上の処罰を受ける必要がある。

しかし、アーティストに性的な疑惑が発生し、それで即その人のアーティストとしての人生が終わりという流れに異論を唱える人もいる。

ウッディ・アレンも そしてあの著名アーティストも

イギリスの名女優ジュディ・デンチは、昨年9月、スペイシーを弁護する発言をしている。

疑惑発覚後に、映画「ゲティ家の身代金」の監督リドリー・スコットがスペイシーの出演分を「削除」し、代わりにクリストファー・プラマーをあてて映画を完成させて公開したことに言及し、こう述べた。「過去に間違った行為をした人は消されるということでいいのでしょうか......歴史から取り除いてしまうのですか?」 例えどんな理由があっても、「映画から消してしまうことに私は賛同できません」。

米映画監督ウッディ・アレンも、スペイシーとやや似た状況にいる。

養女ディランにアレンが性的に不適切な行為を行ったという元妻ミア・ファローの主張(1990年代)が、ワインスタイン疑惑の発覚(2017年秋)で再注目されることになった。

2017年12月、ディランは米紙に「#MeToo革命はなぜウディ・アレンを見逃すのか」と題する署名記事を書いた。著名俳優が続々とディランへの支持を表明した。アレンの映画「マジック・イン・ムーンライト」(2014年)に出演したコリン・ファースも今後、アレンの映画には出ないと宣言する始末となった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国軍機14機が中間線越え、中国軍は「実践上陸訓練

ビジネス

EXCLUSIVE-スイスUBS、資産運用業務見直

ワールド

ロシア産肥料を米企業が積極購入、戦費調達に貢献と米

ビジネス

ECB、利下げごとにデータ蓄積必要 不確実性踏まえ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中