最新記事

株式

米株安に連動し日経平均も急落 「下値」見定めに役立つPBRとは?

2018年12月25日(火)18時37分

12月25日、世界的な株安が止まらず、下値めどが見えにくくなっている。写真は東京証券取引所で2月撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)

世界的な株安が止まらず、下値めどが見えにくくなっている。市場が懸念しているのは景気や企業業績の悪化であり、1株当たり利益をベースにするPER(株価収益率)で下値めどを測るのは難しい。こんな時に参考になるのはPBR(株価純資産倍率)だ。企業の純資産を基準にしており、リーマン・ショック時でも0.9倍程度で下げ止まった「実績」がある。

「解散価値」割り込む

企業の純資産は、資産総額から負債総額を差し引いた自己資本。PBRは1株当たり純資産(BPS)を現在の株価で割って算出される。PBRが1倍であれば、企業が現時点で解散して資産を売却しても、株主1人当たりの分配金は株価と名目上同じだ。理論的には株価は「解散価値」よりも同等以上になる。

ニッセイ基礎研究所・チーフ株式ストラテジスト、井出真吾氏の調べでは、リーマン・ショックや、アベノミクス前夜の「最悪期」でも、PBR(株価純資産倍率、BPSは実績ベース)で0.9倍から1.0倍の水準が日経平均の下限として機能した。

リーマン・ショック時は一時的に0.9倍レベルを割り込み、09年3月には0.81倍台まで低下した場面もあったが、滞空時間はそう長くなく、PBR0.9─1.0倍台が抵抗ラインとなっている。

日経調べで21日時点のPBRは1.04倍(四半期末基準、連結ベース)。これから算出されたBPS1万9390円をベースにすると、PBR1.0倍で1万9390円、0.9倍で約1万7450円となる。

25日の日経平均<.N225>は、景気減速懸念に海外の政治リスクが加わる形となり、前日比で1000円超の急落となった。終値は1万9155円74銭。PBR1.0倍水準を割り込み、0.9倍基準にはあと1700円程度まで迫っている。

BPSが目減りするリスクも

予想PER(株価収益率)は、バリュエーション指標として機能しにくくなっている。日経調べでは、前週末の予想PERは11.25倍。歴史的に13─15倍の平均レベルからみると、かなり低いが、市場の懸念は企業業績の悪化であり、PERの分母である1株利益に疑いがもたれているなかでは「割安」とは判断しにくい。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中