最新記事

株式

米株安に連動し日経平均も急落 「下値」見定めに役立つPBRとは?

2018年12月25日(火)18時37分

リーマン・ショック直後の2008年10月27日にPERは9.53倍まで低下。日経平均は7162円90銭まで下落した。足元の1株利益1792円の9.53倍は1万7082円となり、PBR0.9倍水準に近いが、先行きの1株利益が予想しにくいだけに、あてにはしにくい。

一方、PBRのベースとなるBPSも目減りのリスクがないわけではない。企業の資産総額から負債総額を差し引いた純資産を構成するのは、資本金などの株主資本や、その他有価証券評価差額金などの評価・換算差額など。業績が赤字になれば、減少するおそれがある。「その場合は、株価の下値めどが切り下がる」(井出氏)ことになる。

実際、リーマン・ショック直後の2008年9月に8800円程度あったBPSは、翌年の6月には7600円台に減少している。ただ、EPSが一時的に赤字化し指標性を失ったPERよりは、PBRは金融危機時も有効性を維持したと言えるだろう。

足元のBPSが10%低下すると仮定した場合、PBR1.0倍は1万7150円程度、0.9倍で1万5700円程度が下値めどとなる。

0.9倍で止まらない可能性は

リーマン・ショック級、もしくはそれを超える金融危機が訪れる可能性はあるのか──。

「米金融機関は大きすぎてつぶせないところばかりだ。いざとなれば公的資金の投入が検討されるだろう。銀行の自己資本も厚く、米銀行で破たんリスクは大きくない。現時点で得られる情報をベースにすれば、リーマン級の金融ショックが起きる可能性は大きくない」とマネックス証券のチーフ・アナリスト、大槻奈那氏は指摘する。

しかし、リーマン前に比べて世界の経済成長率は鈍化。日本総研の調べでは、2000─07年と10─17年を比較すると、先進国の実質GDP成長率は先進国で2.3%から1.7%、新興国で6.6%から4.9%にそれぞれ低下した。

一方、国際決済銀行(BIS)のデータによると、政府と民間を合わせた世界全体の債務(非金融セクター)は2017年末時点で177兆ドル(約1京9470兆円)。10年から17年の間に約50兆ドル(5500兆円)拡大している。今のグローバル経済は、金利上昇やドル高に対して脆弱であることは否めない。

リーマン・ショック後に、各国政府は大規模な財政支出と金融緩和で債務を膨らませ、なんとか経済を回復させたが、成長率は十分に戻らず、副作用も大きくなってしまった。足元の株安は米利上げ停止など政策を求める「催促相場」とされているが、政策の選択余地が乏しくなっていることを織り込んでいるようにもみえる。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20250225issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中