米株安に連動し日経平均も急落 「下値」見定めに役立つPBRとは?
リーマン・ショック直後の2008年10月27日にPERは9.53倍まで低下。日経平均は7162円90銭まで下落した。足元の1株利益1792円の9.53倍は1万7082円となり、PBR0.9倍水準に近いが、先行きの1株利益が予想しにくいだけに、あてにはしにくい。
一方、PBRのベースとなるBPSも目減りのリスクがないわけではない。企業の資産総額から負債総額を差し引いた純資産を構成するのは、資本金などの株主資本や、その他有価証券評価差額金などの評価・換算差額など。業績が赤字になれば、減少するおそれがある。「その場合は、株価の下値めどが切り下がる」(井出氏)ことになる。
実際、リーマン・ショック直後の2008年9月に8800円程度あったBPSは、翌年の6月には7600円台に減少している。ただ、EPSが一時的に赤字化し指標性を失ったPERよりは、PBRは金融危機時も有効性を維持したと言えるだろう。
足元のBPSが10%低下すると仮定した場合、PBR1.0倍は1万7150円程度、0.9倍で1万5700円程度が下値めどとなる。
0.9倍で止まらない可能性は
リーマン・ショック級、もしくはそれを超える金融危機が訪れる可能性はあるのか──。
「米金融機関は大きすぎてつぶせないところばかりだ。いざとなれば公的資金の投入が検討されるだろう。銀行の自己資本も厚く、米銀行で破たんリスクは大きくない。現時点で得られる情報をベースにすれば、リーマン級の金融ショックが起きる可能性は大きくない」とマネックス証券のチーフ・アナリスト、大槻奈那氏は指摘する。
しかし、リーマン前に比べて世界の経済成長率は鈍化。日本総研の調べでは、2000─07年と10─17年を比較すると、先進国の実質GDP成長率は先進国で2.3%から1.7%、新興国で6.6%から4.9%にそれぞれ低下した。
一方、国際決済銀行(BIS)のデータによると、政府と民間を合わせた世界全体の債務(非金融セクター)は2017年末時点で177兆ドル(約1京9470兆円)。10年から17年の間に約50兆ドル(5500兆円)拡大している。今のグローバル経済は、金利上昇やドル高に対して脆弱であることは否めない。
リーマン・ショック後に、各国政府は大規模な財政支出と金融緩和で債務を膨らませ、なんとか経済を回復させたが、成長率は十分に戻らず、副作用も大きくなってしまった。足元の株安は米利上げ停止など政策を求める「催促相場」とされているが、政策の選択余地が乏しくなっていることを織り込んでいるようにもみえる。
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