最新記事

中国

Huawei総裁はなぜ100人リストから排除されたのか?

2018年12月31日(月)15時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

いくらか好転の兆しが見えたころ、ZTEが国務院(中国人民政府)にHuaweiの従業員持ち株制度を密告し、Huawei潰しに動き始めた。1993年、国務院と国家経済体制改革委員会はHuaweiに対して「内部職工による持ち株制を即刻停止せよ」という正式な命令書を発布した。従わなければHuaweiの任正非を逮捕するというところまで事態は深刻化した。

このときの国務院総理は、天安門事件で若者に銃口を向けさせた、あの李鵬だ(国務院総理:1987年~1998年)。会社の閉鎖あるいは監獄行きが目前に迫った時に、なんと手を差し伸べたのは当時の朱鎔基国務院副総理である。朱鎔基はHuaweiを視察し、任正非の志に感動して、「3億人民元を国が用立ててあげる」と国家の融資を申し出たのである。

ところがなんと、任正非はそれを断る。

「国がバックボーンにあると、自由に動けなくなるから」というのが理由だ。妻との上下関係で、よほど懲りたのだろう。

このことに感動した深圳市政府が、今度は「深圳市公司内部職員持ち株規定」を発布して、Huaweiを応援した。

元国家経済体制改革委員会の副主任だった高尚全氏は当時を振り返り「1997年時の第15回党大会報告書草案作成の時に、華為(Huawei)は社会主義に反することをしているという内部告発があり、視察に行ったことがある」と、のちに述べている。

結果、民営企業として合法的であるとして、わざわざ第15回党大会の報告書に「新興の株合作制度は労働者の労働と資本を聯合させた新しい集団経済の実現方法の一種である」という文言が盛り込まれたほどだ。これが事実であることは第15回党大会の報告(江沢民の演説)を見れば確認できる。

1998年には李鵬が去り、朱鎔基が国務院総理になることが、この党大会で決まっていた。中国の唯一の人民の味方をした指導者として知られる朱鎔基が、Huaweiを救ったのである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中