ドイツ与党党首選、メルケル首相の「子飼いvs.宿敵」の対決
11月17日、ドイツ与党・キリスト教民主同盟(CDU)は12月7─8日の党大会で新たな党首を選出する予定で、選挙戦が大詰めを迎えつつある。写真は2018年11月、デュッセルドルフで開かれた会議に出席するクランプカレンバウアー氏(左)とメルツ氏(2018年 ロイター/Thilo Schmuelgen)
ドイツ与党・キリスト教民主同盟(CDU)は12月7─8日の党大会で新たな党首を選出する予定で、選挙戦が大詰めを迎えつつある。
現在有力候補として浮上しているのは、党首辞任を表明したメルケル首相の子飼いで路線継承を掲げるアンネグレート・クランプカレンバウアー幹事長。対照的に長年にわたるメルケル氏の「宿敵」で、大幅な変革を唱える実業家のフリードリヒ・メルツ氏の2人だ。
計1001人の代議員の投票で決まる党首選挙の結果はCDUだけでなく、ドイツの将来も左右する。メルケル氏は任期まで首相を続けるとはいえ、2021年10月までに行われる次期総選挙では新党首がCDUの首相候補となるからだ。
世論調査を見ると、7年近くザールラント州の首相を務めたクランプカレンバウアー氏が支持率で首位に立っているものの、合意形成を重視して妥協を好むメルケル氏の政治手法と決別したいと考えるCDU党員の支持を受けたメルツ氏も僅差で追っている。
11月28日にメルツ氏の地盤であるノルトライン・ウェストファーレン州のデュッセルドルフで開かれた討論会では、クランプカレンバウアー氏よりもメルツ氏が聴衆の心をつかんだ。
メルツ氏は、世論調査における支持率低下が続く事態を嘆き「われわれはこの流れに抗し、せき止めて上向かせなければならない」と強く訴えかけた。またメルケル氏の政治手法について「われわれははっきりした立場を取ってこなかった」と暗に皮肉った。
一方、クランプカレンバウアー氏はこの討論会でこそ不利な状況に置かれたとはいえ、これまでにメルツ氏に比べて庶民的な側面を打ち出すことで支持獲得につなげてきた。米資産運用会社ブラックロックのドイツ部門を率いるメルツ氏を念頭に、クランプカレンバウアー氏は「人生の目的が本当に富豪になるかどうか私には分からない」と発言している。
メルツ氏は2000─02年にはCDUの下院議員団長を務めた後、02年にメルケル氏との権力闘争に敗れ、09年以降は議席を持たずに経済の分野に身を置いていたが、ここにきて政治活動を再開した。
最近では、ナチスの犯罪への償いとしてドイツ憲法が規定する全ての「政治的被迫害者」の庇護に疑問を呈したことや、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の連邦および各州議会進出にCDUが手をこまねいているだけであることへの批判が注目を集めている。
ただこれらの発言は、クランプカレンバウアー氏にとって格好の攻撃材料になった。