最新記事

災害

津波で200人以上死亡、原因は火山活動? 最後まで大災害が続いた2018年のインドネシア

2018年12月23日(日)17時40分
大塚智彦(PanAsiaNews)

津波に襲われた翌朝の現地のようす Channel NewsAsia / YouTube

<クリスマスを前にしたインドネシアで津波が発生、調査が進むにつれ被害の大きさが明らかに──>

インドネシアのジャワ島とスマトラ島の間のスンダ海峡で12月22日午後9時半(日本時間午後11時半)ごろ、津波が発生し、ジャワ島西部のバンテン州バンテン県、セラン県、スマトラ島南部のランプン州ランプン県などの海岸沿いの地域に押し寄せ、当局の発表によるとこれまでに200人以上の死亡が確認され、800人以上が負傷しているもようだ。

インドネシアの気象当局によると津波発生以前に同地域での大規模な地震は計測されていないという。このため、同海峡にあるクラカトア火山の噴火など火山活動による海底での地滑りが津波を引き起こした可能性があるとみて調査を続けているという。

活発な活動で形を変えてきたクラカトア火山

同海峡のクラカトア火山は、火山活動の活発なインドネシアでもとりわけ盛んな噴火によって形を変えながら活動を続けている火山島群の総称。1883年に噴火した際には、噴火に伴う津波が周辺地域に押し寄せ3万人以上が死亡したといわれている。また1927年の噴火活動でできたアナック・クラカトア島では現在も活発な火山活動が続いており、今回の津波と関連性があるという見方もでている。

インドネシアの民放テレビ局などによる現地からの映像では、コンサート会場でステージの背後から突然津波が押し寄せる様子や、前触れもなく高さ数メートルの波が住宅地区に押し寄せる様子が記録されていた。現地では津波の高さが1メートルだったとの報道もあるが、発生時間が夜だったことから情報が錯綜している。

国家災害対策庁(BNPB)などによるとこれまでにバンテン県セランやパンデグランなどの地域で430以上の家屋と9軒のホテルが被害を受けたほか、海岸に停泊していた船舶多数も被害を受けたという。スマトラ島のランプン県でも家屋30軒が被害を受け、89人が負傷したと報道されており、被害はさらに増えるとみられている

現地メディアは当初「津波」と伝えたもののその後、「地震がなかったので津波ではない」との見方を示したが、その後再び「津波」の可能性が高いとして報道している。現場海域は22日の夜は大潮で普段より潮位が高い状況が続いていたことから、大潮による高潮と津波で被害が大きくなったとみられている。

ジャカルタの日本大使館によるとこれまでのところ死傷者の中に日本人が含まれているとの情報はないという。

ジャワ島最西部には海外沿いにリゾート地区もあり、国家災害対策庁では被害の全容把握に全力を挙げているが、今度被害はさらに拡大するものとみられている。

気象当局は余震がある可能性があるとして周辺地域の住民に対し「海岸に近づかないように」「避難した住民は自宅に戻らず、避難場所に留まるように」と呼びかけて、少なくとも25日までは警戒を緩めないようにとしている。


ジャワ島のリゾートでバンドが演奏中、津波に襲われた瞬間の映像 Channel NewsAsia / YouTube

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震の死者1000人超に、タイの崩壊ビル

ビジネス

中国・EUの通商トップが会談、公平な競争条件を協議

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...スポーツ好きの48歳カメラマンが体験した尿酸値との格闘
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    最古の記録が大幅更新? アルファベットの起源に驚…
  • 5
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 6
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 7
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 8
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 9
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 10
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中