トランプを追い込む疑惑のサウジ皇太子
Bad Bet
アメリカとイスラエル、そしてサウジは対イランで同じ目標を共有しているが、サウジにとってパレスチナ問題は譲れない。だから米大使館をテルアビブからエルサレムに移転するとトランプが決めた時点で、サウジがイスラエルと手を組む可能性は消えた。
トランプ政権はサウジに肩入れし過ぎたのかもしれない。その結果、疑惑の皇太子が支配を続け、アメリカの中東政策を台無しにしても、両国は互いに縁を切れずにいる。
「(カショギ殺害と)似たようなことは今後も起きるだろう」とライデルは言う。「あの皇太子が賢明かつ合理的な指導者になるとは思えない。彼のやり方はかなり見えてきた。今の皇太子は嫌われ者だ。一生、カショギ殺害の影が付きまとうことだろう」。そうであれば、彼が近い将来に訪米することは難しい。
一方でトランプとクシュナーは、世間がカショギ殺しを早く忘れてくれるよう願っている。「さっさとメディアが別な話題に移ること。それが彼らの望みだ」とペキャスタンは言い、こう続けた。「(アメリカにとっての)短期的リスクは皇太子との関係によるイメージ悪化。長期的リスクはサウジの不安定化と、政権の崩壊あるいは反米政権の登場だ。その可能性は低いが、あの皇太子が注目を浴びれば浴びるほどリスクは高まる」
カショギ殺害とムハンマド皇太子が支配するサウジ絡みの醜聞は、最初から失敗すると決まっていた大きな賭けの副産物にすぎないのだろう。トランプとクシュナーはイランを完全に孤立させ、アラブとイスラエルの長年の対立を解決するという夢を抱いてきた。しかしそれは、サウジの協力の有無にかかわらず実現不可能だった。
「どうみても非現実的だ」とリップマンは言う。知識も経験もない2人の不動産屋が、経験豊富な前任者たちにも解決できなかった問題を解決しようというのだ。「無知な人間が手を出せば失敗の確率が高まる」
<本誌2018年11月13日号掲載>
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[2018年11月13日号掲載]
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