最新記事

米中関係

「キッシンジャー・習近平」会談の背後に次期米大統領候補

2018年11月12日(月)10時19分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

習近平は頻繁に顧問委員会のメンバーと会議を開いているが、アメリカの大財閥は、実は習近平の「お膝元」で親中をアピールしているのである。ここを見なければ、米中関係の何も見えないと断言してもいい。

万一にも、この一派がアメリカの政権を奪取したときに、何が起きるだろう?

習近平の野望である「中国製造2025」や「一帯一路」構想の達成を助け、「中華民族の偉大なる復興」を目指す「中国の夢」を実現させることに手を貸すことになる。

言論弾圧をしながら世界の平和と人類の平等を平気で主張する国、中国。

そのような国を栄えさせることに手を貸す激親中の米大財閥たちがアメリカの政権を収奪する。その可能性(危険性?)の象徴が「キッシンジャー・習近平」会談であり、もう一つのアメリカなのであることを見逃してはならない。

彼らは基本、「金儲け」ができればそれでいいのであり、国の尊厳とか愛国心などは二の次だ。習近平が唱える「人類運命共同体」という呪文にも心情的に共鳴している。

その意味では「アメリカを再び偉大に」と叫んでいるトランプの方が、まだ愛国心があると言えるかもしれない。トランプはいま、キッシンジャー系列から逃れようとしている。

この視点から見ても、「一帯一路」への協力を表明してしまった、そして半導体を通して習近平の真の野望「中国製造2025」の達成に結局は手を貸すことになってしまった安倍首相の立ち位置は実に微妙だ。習近平は「しめた!」とばかりに赤い舌を出していることだろう。

日本メディアは、習近平がトランプに会うことを、まるで追い詰められた習近平がトランプに許しを乞うかのごとく表現を調整したり、習近平が、遂に「既に影響力を失っているキッシンジャーにまで助けを乞うている」かのごとく報道したりしているが、あまりに現実離れした分析だと言わねばなるまい。

われわれは、真実を見る勇気を謙虚に持ち、真実に対して誠実でなければならない。そうでなければ、世界の動向も、いま日本がどこにいるのかも、つかめなくなるだろう。


endo-progile.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル、ハマスが人質リスト公開するまで停戦開始

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中