死んだクジラの胃から大量プラスチックごみ 深刻なごみ対策にインドネシア、バスのフリーライド導入
世界第2位の海洋ごみ排出国
インドネシア政府も海洋のプラスチックごみに関しては問題の重要性を認識して対策に乗り出してはいる。
それというのも米NGOなどの調査で、世界の海洋に投棄されるプラスチックごみはその約半分が中国を筆頭にインドネシア、フィリピン、ベトナム、タイと、アジアの5カ国から出されたものであるとの調査結果や、海洋投棄が中国の882万トンに次いでインドネシアは322万トンという「世界のプラスチックごみ投棄大国」であると指摘されていることが背景にある。
事実、2018年3月には世界的な観光地であるインドネシア・バリ島で大量のペットボトルやストローなどのプラスチックごみが漂う海中をダイバーが泳ぐ映像がFace Bookにアップされ、100万回以上再生されたこの映像は世界のダイバーとともにインドネシア人にも衝撃を与え、問題解決が急務であるとの認識が広まったとされている。
約1万3500の島からなる海洋群島国家インドネシアではごみの河川、海洋投棄がごく当たり前にこれまで行われていた。しかし近年のプラスチックごみによる汚染問題の深刻化から、政府は2025年までに海洋プラスチックごみを75%削減し、家庭ごみも30%削減するという目標を掲げてゴミ対策に乗り出そうとしている。
インドネシア第2の都市ジャワ島東部のスラバヤ市は2018年10月から、市内のバスにプラスチックごみで乗車できる環境対策を導入した。乗客はペットボトル5個かブラスチックカップ10個を持参してバスに乗ると2時間乗車できる無料券と交換することができるというアイデアだ。
回収したプラスチックごみは同市が競売にかけて再生業者に売り、得た利益はバス運営や環境対策に当てるというものである。
インドネシア全体のプラスチックごみ対策からみればこうしたスラバヤ市の取り組みはごく小さな規模に過ぎないが、インドネシアが今真剣にプラスチックごみ対策に乗り出そうとしている一例としては注目に値するだろう。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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