最新記事

ペット

関節炎にかかるスコ猫、呼吸できないパグ......英国獣医師たちからのお願い

2018年10月30日(火)17時45分
松丸さとみ

愛らしさよりも健康で選んで! Leonhard Foeger-REUTERS

<スコティッシュフォールドやパグなど、かわいらしい外見が意図的に作り出された「デザイナー・ペット」の健康上の問題から、イギリスで規制が検討されている>

たれ耳や潰れた顔、意図的に作り出した「デザイナー・ペット」の悲劇

「ペットの極端な個性ばかり追いかけないで......」──英国獣医師会(BVA)はこのほど、こんな声明を発表した。

「極端な個性」というのは、例えば猫のスコティッシュフォールドのたれ耳や犬のパグのように潰れた顔などだ。こうしたかわいらしい外見は、意図的に作り出したものであることが多く、そのため「デザイナー・ペット」などと呼ばれている。

そしてかわいい外見には、健康上の問題が伴う。例えばスコティッシュフォールドは、骨軟骨異形成症を患うことが多い。動物福祉に向けた英国の学会「動物福祉大学連盟」(UFAW)は、耳が折れたすべての猫は骨軟骨異形成症を発症させるとしている。つまり、スコティッシュフォールドのあのかわいい折れた耳は、軟骨を正常に形成できないのが原因なのだが、これは後に関節炎を発症させることになるというのだ。

またパグも、短頭種気道閉塞症候群(BAOS)を始め複数の病気にかかりやすいことが指摘されている。BAOSは、パグのような潰れた顔をした犬によくみられる病気で、頭蓋骨が短いため呼吸が難しく、慢性的な呼吸困難や不快感に悩まされることになる。

セレブの影響でデザイナーペット人気に

BVAのサイモン・ドハーティ会長は声明の中で、ここ数年ほど、パグのような顔がつぶれた犬種が英国で爆発的な人気になっていると説明している。有名人のペットとして注目を浴びたり、ソーシャルメディアで話題になったりしているのがきっかけだ。

スコッツマン紙は一方、スコティッシュフォールドも、テイラー・スウィフトやエド・シーランなどの人気歌手が自分の飼い猫をインスタグラムによく投稿していることもあり、人気を集めているとしている。

◎テイラー・スウィフトのインスタグラム投稿
https://www.instagram.com/p/BphPK0qF7_a


View this post on Instagram

Happy National Cat Day to you and your highly sophisticated creatures. Boop.

Taylor Swiftさん(@taylorswift)がシェアした投稿 -


BVAのドハーティ会長はまた、ミニチュア・ホースやうさぎのイングリッシュ・ロップ、顔がつぶれたペルシャ猫といったタイプのペットがインターネット上で人気になっていることにも触れている。このようなペットは健康上の深刻な問題が伴うのだが、消費者がこうした問題を知らずに「かわいいから」という理由だけで買い求めてしまうのではないかとの懸念をドハーティ会長は示している。

例えば耳が大きく垂れたうさぎ、イングリッシュ・ロップは非常にかわいらしい外見をしているのだが、前述のUFAWによると、「異常に長い耳のせいで敏捷性や動きが制限される」上、耳を引きずることから外傷や汚れ、感染、凍傷を引き起こす可能性があり、そのためうさぎは著しい不快感や痛みを慢性的に感じてしまう可能性があるという。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

アングル:揺らぐFRBの世界経済安定化機能、トラン

ワールド

米副大統領がローマ教皇称賛 政治的相違も「偉大な司

ビジネス

日銀、追加利上げ先送りの可能性 米関税巡る不透明感

ビジネス

仏ケリング、第1四半期は14%減収 グッチが予想以
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負かした」の真意
  • 2
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学を攻撃する」エール大の著名教授が国外脱出を決めた理由
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考…
  • 6
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 7
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 8
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 9
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 10
    ウクライナ停戦交渉で欧州諸国が「譲れぬ一線」をア…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 6
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 7
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中