安倍政権、消費増税時の家計負担を大幅軽減 万全強調に「何のための増税か」との声も
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10月30日、来年10月に政府が予定している消費税率10%への引き上げに伴う負担軽減策は、家計負担を大幅に圧縮する効果がありそうだ。写真は日本円紙幣。2010年8月撮影(2018年 ロイター/Yuriko Nakao)
来年10月に政府が予定している消費税率10%への引き上げに伴う負担軽減策は、家計負担を大幅に圧縮する効果がありそうだ。2%の増税分が5.6兆円になるのに対し、実質的な負担額は1兆円台まで圧縮される可能性があり、政府は「万全」の対策だと強調する。これに対し、財政の専門家らからは「過剰対策」との指摘も出ており、社会保障の持続性や財政再建の行方を危ぶむ声も浮上している。
追加策で国民負担は大きく減少
税率2%の引き上げにより家計の負担は5.6兆円増えるものの、他方で食料品などを対象にした軽減税率や教育無償化を骨子とした恒久的措置、低所得者給付金による所得補填(ほてん)、年金の改訂など、家計負担の緩和策を差し引くと、ネット負担額は2.2兆円に縮小する──。これは日銀が今年4月に公表した試算結果だ。
政府・与党は、さらに家計負担を減少させるため、ポイント還元策やプレミアム商品券、自動車減税、住宅ローン減税拡充などの導入を検討している。
具体的な対策の内容は年末にかけて最終調整されるが、たとえば中小小売店での購入を対象にしたキャッシュレス払いのポイント還元が実現した場合、最大で約7400億円の負担軽減になるとの試算もある。
第一生命経済研究所・首席エコノミストの熊野英生氏は、1世帯当たりのポイント対象消費支出について、対象となる中小企業割合を57.1%、キャッシュレス比率を26.3%などと仮定し、年間43.9万円と試算。全体では家計最終消費支出の245.2兆円に対し、約7400億円になると弾き出した。
プレミアム商品券については、2014年増税時の対策の際に1516億円がプレミアム分として使用された(政府調査)。
自動車減税は、自動車業界からの要望が強く、与党内では恒久的な減税として議論されている。約1000億円の税収規模である取得税が廃止される可能性があり、保有にかかる自動車税も最大4000億円程度が廃止されるケースもありそうだ。
子育て世帯から年金世帯まで様々な軽減策が並んだ結果、実現すれば増税負担は、何も対策を打たない場合の増税負担5.6兆円に比べて「1兆円台程度まで縮小してもおかしくない」(熊野氏)とみられている。
・消費増税の対策メニュー(負担軽減効果の試算 出所)
・軽減税率 1兆円(日銀試算)
・幼児教育無償化 1.4兆円(日銀試算)
・ポイント還元 6300億円程度(第一生命熊野氏試算)
・プレミアム商品券 1516億円 (14年実績)
・自動車減税(取得税) 1000億円程度(税収実績)
・自動車減税(自動車税) (不明)
・住宅ローン減税(不明)