最新記事

ウイグル

ウイグル弾圧の「刑務所国家」中国で大儲けする監視カメラメーカー

CHINA’S GROWING SURVEILLANCE INDUSTRY

2018年10月25日(木)19時10分
チャールズ・ロレット(ジャーナリスト)

magw181025-uygur02.jpg

ハイクビジョンのオフィス付近に設置された監視カメラ(杭州) VCG/GETTY IMAGES

中国政府は、この地域でのイスラム教徒による分離独立運動の動向に神経をとがらせている。対策として、中国の主体民族である漢人を大量に移住させてきたが、この戦略は裏目に出た。09年、区都のウルムチで大規模な暴動が発生し、多くの死者を出した。当局が取り締まりを強化すると、一部のウイグル人はテロに走った。

チベット自治区でチベット人への厳しい弾圧を行ってきたことで知られる陳全国(チェン・チュエングオ)が新疆ウイグル自治区トップの党委員会書記に就任したのは16年。ほどなく、陳は治安関連予算を2倍近くに増額した。

監視カメラと収容所の関係

それ以来、ハイクビジョンとダーファは、新疆で11件の大規模な監視プロジェクトを受注し、少なくとも12億ドルを売り上げたとされる。昨年、ハイクビジョンは30%、ダーファは40%売り上げを伸ばした。

この11件の監視プロジェクトは、一つ一つが非常に大掛かりなものだ。例えば、17年にダーファが受注したプロジェクトの1つは、予算規模が10年間で6億8600万ドルに上っている。ハイクビジョンがウルムチで受注したプロジェクトは、約3万台の監視カメラを設置する計画だ。

中国で大規模監視システムが導入されるのは、新疆が最初ではない。中国政府は05年、主に都市部の治安維持を目的に、「天網」と名付けた監視ネットワークを全土に整備する取り組みに着手。その後、これを大幅に強化したシステムを導入し、顔認識システムで国内の至る所を監視下に置くプログラムを15年に完了させた。

しかし、新疆ほど監視が徹底されている地域はほかにない。単にナイフを買ったり、市場に買い物に行ったりするだけでも、身元確認が要求される。

監視されるのは、道路や公共のスペースだけではない。ハイクビジョンが受注した2つの監視プログラムでは、農村部のモスク(イスラム礼拝所)の中にまで監視システムを導入することが計画されている。

中国政府が目指すのは、新疆で全てをコントロールすることだ。そのために、通信データを秘密裏に当局に流すアプリを普及させたり、留学経験のあるウイグル人や、米政府の資金で運営されているメディアで働くウイグル人記者の家族を逮捕したりしている。

最も気掛かりなのは、秘密の強制収容施設だ。イスラム的、もしくは反中的過ぎると見なされたウイグル人やその他の少数民族がこの「再教育キャンプ」に収監される。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 6
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 9
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中