最新記事

動物

他人事じゃない? 中国のイルカやシャチのショーに欧米から批判、マリンパーク急増で

2018年9月30日(日)20時30分

違法捕獲

中国鯨類保護連盟によると2014年以降、クジラやイルカ、ネズミイルカなどを含め、鯨類872頭が中国で捕獲されている。

現在のところ、こうした鯨類の取引を制限する地方政府の規制や国際的スタンダードはない、と海南省にあるリゾート施設アトランティス三亜で水族館施設の管理を担当するルシオ・コンティ氏は言う。

コンティ氏によると、絶滅が危ぶまれる野生動物の違法取引が拡大していることを背景に、アトランティスでは、動物福祉の基準策定を政府に働きかけているという。

「この島の漁師は、頼まれれば何でも手に入れてくる。ジンベエザメでも何でも、絶滅危惧種も、そうでないものも捕まえてくる。何も規制がないからだ」

中国政府の文化観光部はロイターのコメント依頼に対して、野生動物の保護を担当する国家林業局に取材するよう促した。同局は、ロイターからの質問を国家海洋局に回したが、海洋局は自然資源部にそれを転送。自然資源部はその質問を農業農村部に回したものの、農業農村部から回答はなかった。

中国のマリンパークの多くは、ジンベエザメやシロイルカ、イルカやオニイトマキエイ(マンタ)を飼育している。だが、黒と白がくっきりと分かれた胴体で知られるシャチが公に展示された例は、現段階では確認されていない。

ワシントン条約(CITES)によると、2013─2016年にかけて、少なくとも13頭のシャチがロシアから中国に輸入された。2017年にはさらに2頭が輸入され、今年さらにその数が増える予定だと、ドルフィン・プロジェクト・ロシアのオクサナ・フェドロバ氏は指摘する。

CITESは、取引にかかわった企業名を明かしていない。

英保護団体のホエール・アンド・ドルフィン・コンサベーションによると、長隆海洋王国が9頭、上海海昌海洋公園が4頭、無錫長喬海洋王国が2頭のシャチをそれぞれ保有しているという。

野生のシャチやシロイルカを中国に提供している唯一の国であるロシアは7月、シャチ7頭の違法売買について捜査を始めたと発表した。

ロシア検察庁の声明によると、4社がこの売買に関わっていたが、それぞれの会社名や、シャチの売却先は明らかにされなかった。

ロシアは2018年、シャチ13頭の捕獲枠を承認。8月に監視活動を行った活動家によれば、すでにオホーツク海で数頭のシャチが捕獲されたという。

「問題は、中国で生まれている需要にある」とフェドロバ氏は指摘。団体オーシャン・フレンズが組織した活動家らと監視活動を行った同氏は、7人編成のこのチームは捕獲者から脅迫を受けたり、狙撃されたり、盗難の被害にあったりしたと話す。

ドローンが撃墜されたため、彼らはシャチ捕獲場面は録画できなかったが、オーシャン・フレンズの提供写真には、ロシア船の輸送タンクにシャチ2頭が捕らえられているところが写されている。船の所有会社は、シャチの輸送をしただけで捕獲はしていないと説明した。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

シャープ、堺市の土地などソフトバンクに引き渡し 売

ビジネス

焦点:中国株、トランプ関税で再び「偉大」に 避難先

ビジネス

午後3時のドルは148円半ばへじり高、株反発で円高

ワールド

米メディア、投票システム会社に和解金4000万ドル
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 2
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ世代の採用を見送る会社が続出する理由
  • 3
    【クイズ】世界で1番「石油」の消費量が多い国はどこ?
  • 4
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 5
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 6
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 7
    SF映画みたいだけど「大迷惑」...スペースXの宇宙船…
  • 8
    「紀元60年頃の夫婦の暮らし」すらありありと...最新…
  • 9
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎…
  • 10
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 5
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 6
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 7
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 8
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 9
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 10
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中