日本車メーカー、トランプが高関税や数量規制なら死活問題 日米首脳会談を注視
日米間の貿易不均衡にいらだってきた米政府は、7兆円を超す対日貿易赤字の圧縮を日本に求めている。複数の関係筋によると、米側は今回の日米通商協議(FFR)の前段階で、非公式に日本からの自動車輸出削減と米現地生産の増加を要請してきたという。
ただ、日本メーカーにとって、米現地生産の増強はかなり高いハードルだ。一般的に、米国での完成車工場新設には年産24万台規模で1000億円ほど投資が必要とされる。
SBI証券の遠藤功治シニアアナリストは「通常フル生産でも黒字に約5年はかかる」と指摘、「生産車種のロットが小さかったり、緻密な生産技術が必要な車種なら黒字までさらに時間を要し、固定費の上昇にもつながりかねない」と話す。
また、高級車の輸出比率が高い日本メーカーにとって、対米輸出の削減は大幅な減益要因となるばかりでなく、国内の雇用問題にも直結しかねない。
25日朝(日本時間同日夜)、ニューヨークで茂木敏充経済財政相とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が2回目となるFFRを開催。終了後、茂木経財相は、両国の貿易を促進する方策や枠組みについて「基本的な認識は一致した」と表明。詳細な中身は「首脳間で議論し、合意した上で発表したい」と語った。
このため、自動車業界関係者の注目は、26日に予定されている安倍晋三首相とトランプ大統領の日米首脳会談に集まっている。
関係筋によると、日本側は米国が自動車に対する25%の関税について、適用回避を約束すれば、農産品を中心にした市場開放などについて、米国との2国間交渉に応じる姿勢を米国側に示し、理解を求める交渉スタンスを取っているという。
ただ、11月の米中間選挙を前に、下院で共和党が過半数を失うとの情勢判断が広がっており、トランプ大統領が米国内での支持拡大を目指し、日本に対して強い姿勢を打ち出す可能性を危惧する日本政府関係者の声もある。
首脳会談の決着内容によっては、日本メーカーの業績に大きな影を落とす展開も予想される。
(白木真紀 取材協力:竹本能文、木原麗花 編集:田巻一彦)