最新記事

スポーツ

本田に野茂にネイマール......「ゲームチェンジャー」は批判を恐れない

IN PRAISE OF THE GAME-CHANGERS

2018年9月19日(水)17時00分
ピーター・タスカ(経済評論家)

NW_SPO_02.jpg

サッカーW杯3大会連続でゴールを決めていながら批判も多い本田圭佑 ADAM PRETTY-FIFA/GETTY IMAGES

多くのトップアスリートは、例えばクリスティアーノ・ロナウドのようにナルシシストだと言われたり、朝青龍や本田圭佑のように傲慢に見えたりする(本田はサッカーW杯3大会連続でゴールを決めた数少ない選手の1人なのに、なぜかやたらと批判を浴びる)。

それは避けられないことなのだ。一般社会では謙虚は美徳だ。だがトップレベルのアスリートが自分の能力に疑いを持ったら、対戦相手を怖がらせることはできない。

彼らは子供時代や青春時代を犠牲にして、成功に全てを賭けた。道半ばにして失敗し、精神を病んだり依存症になった選手もいる。キャリアを終えてから、それまでのツケを払うことになった選手もいる(例えば清原和博だ)。

彼らに普通の人生を生きろと言っても無理なのだ。普通の人生など知らないのだから。

すごい選手は欠点もすごい

偉大なアスリートが人前で見せる顔はさまざまだ。ロジャー・フェデラーやペレは紳士に見えたが、ジョン・マッケンローやディエゴ・マラドーナは違う。だが、フェデラーにも外からはうかがい知れない部分があるだろう。

マッケンローは26歳の頃から女優たちと浮名を流し、二度とトップに返り咲くことはなかった。80年代前半のテニス界で王者として一時代を築いた後は、人生を楽しみたかったのだ。

フェデラーは今年のウィンブルドン選手権で36歳にして第1シードとなったが、まだ満足してはいない。彼が目指すのは史上最高のテニス選手として名を刻むことだ。マッケンローとフェデラー、どちらがナイスガイで、どちらが勝利に取りつかれた戦士だろうか。

サッカーブラジル代表のネイマールは、ファウル欲しさから大げさに痛がる「過剰演技」で知られ、マラドーナは「神の手」ゴールで歴史に名を残した。タイガー・ウッズはセックス依存症だった。並外れたアスリートは欠点も並外れている。

スティーブ・ジョブズが礼儀正しい男だったら、iPadもiPhoneも生まれていなかっただろう。そしてウェッブ・エリスがフェアプレー精神あふれる少年だったら、ラグビーは生まれていなかった。

<本誌2018年9月11日号掲載「特集:『嫌われ力』が世界を回す」より転載>

20241126issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 7
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中