最新記事

一帯一路

中国マネーはアフリカをむしばむ麻薬なのか

Chinese Aid and Investment Are Good for Africa

2018年9月18日(火)16時20分
J・ピーター・ファム (大西洋協議会アフリカセンター所長) アブドゥル・サラム・ベロ (同アフリカセンター客員フェロー) ブバカールシド・バリー (世界銀行アフリカグループⅡ理事長)

ナイジェリアの最大都市ラゴスで交通システムの建設現場に掲示された中国語の看板 Joe Penney-REUTERS

<巨額投資の「思惑」を警戒し過ぎる必要はない――地域の発展と世界経済の起爆剤にするための方法>

9月3~4日に北京で開催された中国・アフリカ協力フォーラム(FOCAC)で習近平(シー・チンピン)国家主席は、アフリカに3年間で600億ドルの経済支援を行い、最貧国の債務返済を一部免除すると表明した。前回15年のFOCACで表明した支援と同額で、アメリカの対アフリカの融資や投資を大きく上回る。

FOCACは00年から3年に1回、中国がアフリカ諸国の首脳らを招いて開催している。当初はアフリカ経済の小さなプレーヤーにすぎなかった中国だが、今や中国とアフリカの貿易額は2000億ドル近くに上る。

中国からの経済支援は00~11年で750億ドル。OECD(経済協力開発機構)開発援助委員会の試算では、同期間の対アフリカ支援の総額は4040億ドルで、約20%を中国が拠出した計算になる。

アメリカも同期間に中国を上回る900億ドルの支援をしたが、アフリカで人気が高いのは中国からの支援だ。

欧米の支援は現金や資材の直接のやりとりが中心なのに対し、中国の支援の大半は、輸出金融とインフラへの融資(利子はほとんどないか、全くない)の形を取る。迅速で、融通が利き、条件もほとんどない。

IMFの試算によると、サブサハラ(サハラ砂漠以南)諸国の対外債務のうち、中国が占める割合は05年の2%から12年は約15%に急増している。米マッキンゼーによると、15年にアフリカ諸国の政府が新たに背負った債務のうち、約3分の1が中国からの借り入れだ。

こうした巨額の中国マネーがアフリカの主権とアフリカにおけるアメリカの利益をむしばんでいると、多くの関係者が警鐘を鳴らしている。

GDPの7割以上を融資

今年3月にレックス・ティラーソン米国務長官(当時)は、「中国の投資はアフリカのインフラ格差(の是正)にとって有望だ」と認める一方で、「不透明な契約や(借り手に大きな負担がある)略奪的融資、買収が横行する取引がアフリカを借金漬けにして主権を弱体化させ、長期的かつ自立的な成長を阻んでいる」と非難した。

例えば、アフリカ東部の小国ジブチ。アメリカは02年からここにアフリカ最大の軍事基地を置き、アフリカ東部やアラビア半島南部の対テロ掃討作戦の拠点としている。

一方で、人口95万人足らずのジブチが中国から受けている融資は、この2年だけで14億ドルに上る。ジブチのGDPの4分の3以上に当たる額だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中