最新記事

英EU離脱

ブレグジット支持の英保守党員に高まる不満 メイ首相への反旗広まる

2018年9月13日(木)10時51分

チェッカーズ案

ビジネスに優しいメイ首相の離脱案は、それが7月にまとめられた首相別邸の名にちなんで「チェッカーズ」と名づけられた。同案は離脱後もモノとサービスの円滑な流れを何よりも重視している。

EU側は英国による一段の譲歩が必要だと主張している。10月までに合意に至るとの期待は、11月にまでずれ込んでいる。

メイ首相は、どのようなことが浮上しようとも、恐らくクリスマス前までには議会の承認を求めると宣言している。

もし承認が得られなかった場合、英国が合意なしにEUを離脱する可能性に直面することになる。そうなれば、メイ氏に対する信頼は失墜し、首相の座を追われかねない。総選挙の前倒しを余儀なくされる可能性すらある。

定数650議席の下院では、メイ首相が率いる保守党からの316票に同党に協力する民主統一党の10票を加えた326票が、野党の313票を13票上回り、議会の過半数を得る見込みだが、あくまでこのシナリオは保守党議員が団結して首相を支えることが前提となる。

現時点では大きな仮定にすぎないが、7月にはEU残留派議員12人がブレグジット関連法案を巡り反対票を投じた。

議員に圧力をかける上で一般党員は重要な役割を担うと、ロンドン大学クイーン・メアリーの政治学教授、ティム・ベイル氏は指摘する。

「つまり、彼らがハードブレグジット(合意なきEU離脱)に懸命に取り組んできたのであれば、そこから手を引くのは難しい」

マンチェスター北西部のボルトン・ウエスト選出の保守党議員、クリス・グリーン氏のような議員はすでにメイ首相に反旗を翻した。

グリーン議員は7月、チェッカーズ案に反対の意を表明するため、運輸省で担当していた職を辞任した。もし議会で投票されることになれば、反対票を投じるつもりだという。

グリーン議員の選挙区は国政の傾向を表す指標として伝統的に見られており、国民投票の離脱支持率は56%に上った。

昨年の総選挙で936票を獲得して選出されたグリーン氏は、支持者が自身を見捨てて、反EUを掲げる英国独立党(UKIP)にくら替えすることを懸念している。

「提案されている離脱案に対する見方はほぼ例外なく否定的で、絶望感すら漂っている」とグリーン議員は言う。

ロンドン東部のホーンチャーチとアップミンスターの保守系団体の会長を務めるボブ・ペリー氏は、チェッカーズ案が明らかになって以降、160─170人いる会員の約10人が脱退、あるいは更新を拒否したと語った。

「彼女(メイ首相)は一般の支持者に耳を傾けるべきだ。結局、一軒一軒、足で支持を訴えるのはわれわれなのだから。彼らの支持が得られないなら、厄介なことになるだろう」と同氏は語った。

ビーコンズフィールドでは、ストラッフォード氏が2022年に実施される次の総選挙で現職のドミニク・グリーブ議員を党候補として擁立しないよう求める嘆願活動を開始した。同議員が議会でEUを支持する反逆的な動きを何度か主導したことが主な理由だという。

前出の投資家ケンドリック氏は、保守党員歴30年において、党内でそのような分断や、指導部と一般党員にまたがる断絶が起きた記憶がないと話す。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国人民銀、アウトライトリバースレポで3月に800

ビジネス

独2月小売売上は予想超えも輸入価格が大幅上昇、消費

ビジネス

日産とルノー、株式の持ち合い義務10%に引き下げ

ビジネス

米通商政策で不確実性、利下げに慎重になる必要=イタ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 5
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 6
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 9
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中