アメリカ中間選挙、民主党の上院奪還は「絵に描いた餅」か
戦力の集中投下
民主党の2つのスーパーPAC(政治資金団体)である「プライオリティズUSA」と「シネート・マジョリティPAC」は、少なくとも総計で1億2000万ドル(約134億円)をアリゾナ、ネバダ、ウェストバージニア、インディアナ、モンタナ、ノースダコタでの宣伝費に投入している。
スーパーPACは特定候補・政党の選挙戦とは独立して行動しなければならないが、金額に制約なく資金を集め、支出することができる。
民主党上院選挙対策委員会の独立支出部門は、アリゾナ、ネバダ、ウェストバージニア、インディアナ、モンタナ、ノースダコタの各州で当面のCM枠として3000万ドル分を確保している。
また民主党関係者によれば、同党とその外部グループは、テネシー、テキサス両州でも、見込み薄ながらも議席奪還をめざして資金を投じているという。
最近の世論調査によれば、テキサス州では現職の共和党テッド・クルーズ上院議員に対し、挑戦者である民主党ベト・オルーク氏が2─4ポイントという僅差で追走している。
また現職引退を受けたオープンレースとなっているテネシー州では、人気の高い穏健派の民主党フィル・ブレッドセン知事が、共和党のマーシャ・ブラックバーン下院議員とつばぜり合いを演じているという調査結果になっている。
医療、税金、政治腐敗
民主党内での調査によれば、中間選挙で民主党候補にとって有利な争点となるのは、医療制度と、共和党による減税政策だという。有権者の中には、この減税政策が富裕な個人・企業に対する「ばら撒き」だという見方があるためだ。
民主党の戦略担当者であるカレン・フィニー氏はシカゴでの会合の際、「医療制度のような重要テーマは、有権者にとって本当に深刻だ。共和党は減税政策でポイントを稼げると考えていたが、逆に弱点となっている」と話している。「われわれはこうした主要な争点を巡るトレンドを有利に使っている」
今月、トランプ大統領の元選対本部長ポール・マナフォート氏が有罪評決を受け、元顧問弁護士マイケル・コーエン氏が罪状を認める証言を行ったことを受けて、民主党全国委員会のトム・ペリッツ会長は、上院選挙のなかで民主党がトランプ大統領をめぐる法的なトラブルを強調していくことを明らかにした。
コーエン氏は脱税、銀行詐欺、選挙資金に関する違反などの連邦犯罪の告発について罪状を認めた。同氏はトランプ氏と性的関係があったと主張する2人の女性に対して口止め料を払うよう、トランプ氏本人から指示を受け、その支払いは2016年の大統領選挙を考慮したものである、と証言している。
これらの女性との関係を否認しているトランプ大統領は、コーエン氏には個人的な資産から支払いを行っており、選挙戦を有利に進めるためではなく、個人的な問題を解決するために支払ったものだと主張している。
「この共和党政権に見られる腐敗の文化は手に負えなくなっている」と、ペリッツ氏は民主党の会合で語った。
(翻訳:エァクレーレン)
[シカゴ 29日 ロイター]