金正男暗殺事件の実行犯女性アイシャ被告らの裁判は審理継続に マレーシア裁判所
インドネシア国内では無罪を求める声
検察側は2被告が事前に北朝鮮国籍の男性から手順の説明を詳しく受け、空港内で事前に「練習」していたことや、犯行直後にトイレで手を念入りに洗っていることから「液体が毒物であることを知っていた」などとして「殺意があった」として殺人罪での起訴に踏み切った。
しかし当初から「2被告はスケープゴートで、北朝鮮の容疑者なしの裁判は真相解明に程遠く、不公正である」(インドネシア地元紙)などと無罪を求める声が強かった。
ベトナム、インドネシアの対応に温度差
アイシャ被告に対しては逮捕直後からクアラルンプールのインドネシア大使館関係者が頻繁に面会に足を運び、法的支援やジャカルタ西郊バンテン州セランに住む両親との連絡を仲介するなど積極的な活動で支援してきた。
アイシャ被告は両親に宛てて手紙を送り「裁判は早く終わって家に戻ることができると信じている。心配しないで下さい」などと伝えていた。
「娘は間違いを犯していない、犠牲者だ。無事に帰ってこられることを祈っている」とインタビューで両親は無罪判決への期待を示していた。同日の審理継続の決定を聞いたアイシャ被告の父アスリアさんは「運命を政府とアラーの神に委ねるしかないが、娘が早く釈放され、自由になることを願っている」と言葉少なに話した。
一方のフォン被告側は在マレーシアのベトナム大使館やベトナム外務省の関係者さらに弁護士も頻繁に面会に訪れることはなく、法的支援も限定的なものに限られ、フォン被告は拘置所内で孤立感を深めていたいという。
ベトナム北部の首都ハノイから東南に車で約3時間のナムディン省ギアフン県ギアビン地区にある留守宅では、ベトナム外務省からの連絡を受けたフォン被告の父親と兄が報道陣に対応、父のドアン・バン・タン氏(58)は「とても残念だ」と落胆の表情を見せ、兄のドアン・バン・ビン(42)は「裁判所に任せるしかない」と言葉少なに話した。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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