「再来ユーロ危機」投資家ソロスの大胆予測と崩壊EUの処方箋
How To Save Europe
次の金融危機が迫っている?
EUは3つの問題に直面している。難民危機、 経済発展を妨げる緊縮政策、そしてブレグジット(イギリスのEU離脱)に代表される地理的分断だ。
最初に手を付けるべきは難民危機だろう。私は常に、ヨーロッパの難民の配分は完全に自発的であるべきだと主張してきた。加盟国は、望まない難民の受け入れを強制されるべきではないし、難民の側も行きたくない国への移住を強制されるべきではない。
欧州の移民政策はこの基本原則に基づくものであるべきだ。多くの難民が最初にたどりつくイタリアなどの地中海諸国に負担を強いているダブリン規約を早急に改定すべきだ。さもないと政治的に悲惨な結果が生じる。
EUの信用格付けは高い。つまり有利な条件で借金できる。なのにその能力を使っていない。自らの存立基盤が揺らいでいる今こそ、この能力を存分に生かすべきだ。借金の増加は緊縮政策全盛の時代の風潮に反するが、実は緊縮政策こそヨーロッパが直面する危機の2つ目の要因なのだ。
少し前までは、緊縮政策が功を奏しているとの見方も可能だった。欧州経済は緩やかに改善しているから、しばしの辛抱だと主張することもできた。しかし今やアメリカのイラン核合意離脱と米欧の同盟関係の崩壊という危機が迫り、どちらも欧州経済に悪影響を及ぼすことは必至だ。ドル高は既に新興市場からの資本逃避を引き起こしている。私たちは次の大きな金融危機に向かいつつあるのかもしれない。
アフリカ版マーシャルプランを発動して経済を刺激するのに、今はまたとないタイミングだ。そこで私は、その資金調達のために型破りな提案を用意している。
3つ目の問題は、ブレグジットに代表される地理的な分裂だ。離脱のプロセスでは誰もが手痛いダメージを被る。去る側にも去られる側にも害がある。しかし、この救い難いプロセスを「ウィン・ウィン」の状況に転換することは可能だ。
EU残留がイギリス経済に好影響を及ぼすのは間違いないが、それが明らかになったのはここ数カ月のことだ。本当に理解してもらうには時間がかかるだろう。その間にEUは、イギリスのような国も残留を望むことができる組織に生まれ変わればいい。