中国共産党「農村に帰ろう」Uターン戦略の見えない勝算
「仕事を追って出て行く必要はない。機会はこの故郷にある」──。Gongxiang村の入り口に掲げられたバナーにはそう書かれていた。この誘致活動に今後5年間で最大5億元の予算が計上されると、村長Chen Deyuan氏は語った。
スローガンを考えたのは、政府向けに研修サービスを提供する地元起業スクールのWang Xin代表だ。
彼女のスクールでは、電子商取引や中国茶など、地元政府が重要だと考える分野の専門家を育成する訓練を行っている。同代表は、なるべく多くの人を呼び戻し、毎年数千人を訓練したいと話す。
だが、今年このスクールが就職フェア開催を支援し、簡単な製造業を中心に200以上の求人募集をした際、応募があったのはその半分以下だったと、Wang代表は言う。
それでも、地元当局者は楽観視している。
「3年以内に、故郷を去った人の8割が戻ってくるだろう」と、Chen村長は話す。
双峰県周辺の村を管轄する婁底市の楊懿文市長は、観光などの分野を振興する「特区」の設置などの大規模プロジェクトがあれば、追い風になると話す。
エクソダス
地元の雰囲気は、それほど歓迎的ではない。
「われわれの工場の従業員の大半は、中年かそれ以上だ」と、靴メーカーの九興控股(ステラ・インターナショナル)<1836.HK>が運営する工場で働く事務員He Shaさんは言う。工場の平均賃金は月額2700元だ。
都市部に住むミレニアル世代と、農村に住む家族や親戚との分断も大きい。
河南省の小さな町で育った27歳のLi Jinglongさんがその例だ。現在は米国で教育を受けたデザイナーとして活躍するLiさんに、故郷に戻る考えはまったくない。
Liさんは1年前、スタートアップ企業のブランディングやデザインを請け負う事業を起業するため、湖南省の省都・長沙市に拠点を移した。「もし田舎に戻ることがあるとしたら、それは郷愁からだろう」と、Liさんは話す。
問題の多くは地方の低賃金にある。