中国共産党「農村に帰ろう」Uターン戦略の見えない勝算
湖南省 Furong村の自宅で取材に応じるZhao Fenglingさん。2018年5月撮影(2018年 ロイター/Ryan Woo)
大きな帆布の上で乾燥させた菜種を叩き、種子を振り落としながら、 Liu Dekeさん(73)は巻きタバコをふかしていた。近くで種子を取り終えた茎を燃やしており、立ち上る煙が水田を渡っていく。
中国湖南省の農村地帯にある東風村に住む農家のLiuさん夫婦にとって、これは日常の作業風景だ。中国農村部に住む多くの家族のように、彼らの子どもたちも、ずっと前から農業よりはるかに高い給料を得ることができる都会に移住してしまった。
高齢化が進む中国の農村経済は、多くが小規模農家や零細産業で成り立っており、生産性低下に直面している。代わりとなる新たな成長エンジンは現れていない。
人材流出があまりにも進展したことを危惧した中国の習近平国家主席は、いまや才能ある人材が地方にUターンするよう呼び掛けている。都市化が繁栄への入り口だと位置づけている中国では、これまで考えられなかった動きだ。
これは、約5億7700万人が暮らす農村地方の状況を改善するこで、社会不安の芽を摘み、消費を活性化させ、大都市の成長をコントロールしたいという、中国共産党の願いを反映している。
また、習主席が昨年10月に打ち出した「農村振興戦略」の一環でもあると、中国国家発展改革委員会(NDRC)のアドバイザーを務める馬暁河氏は語る。農村地帯のインフラを改善し、近代農業を発展させ、「数兆元(数十兆円)」もの投資を呼び込む構想だという。
この戦略の発表以来、いくつかの地方政府が、起業家や高い技術力を持つ労働者、大卒者、そして「プロの近代農業者」などを、ルーツがある農村に呼び戻すためのインセンティブに取り組むことを約束した。
中部河南省は、起業するために同省の農村地帯に移住する人を対象に、60億元(約995億円)を今年支出する。こうした「地方起業家」20万人を誘致したい考えだ。
東風村など500以上の小さな村々に囲まれた湖南省双峰県をロイター取材陣が訪れると、地方へのUターンを奨励する活動が活発に行われていた。